□討論□
人々の「安心」を獲得するには

田中 グリムストンさんによると、「事故を二度と起こさない」というと、かえって信用されないということのようだが。

八木 立地地域の人たちと話していて感じているのは、「安全」と「安心」の違いか。「安全」というのは科学的データで説明できるもので、一方、「安心」というのは感性的なもので、科学的データで担保される「安全」に対し、事業者として、さらに高めていく姿勢を示すことで、結果的に信頼を得られるということではないか。科学的データを示す「説得」ではなく、こういう姿勢で取り組んでいると「納得」してもらうことではないか。

田中 日本の放射線に対する感情的な反応は、広島・長崎の被爆経験から来ているのだろうか。

リーシング よくわからないが、これは日本の文化全体に関わることではないか。華道などに見られるが、色々と細かいところに気を配るといった国民性や、地震、津波などの災害に見舞われる中でも秩序が保たれていることなど。

田中 フィンランドのオルキルオト原子力発電所では、電力会社の本社がサイト内にあることで、住民の安心を獲得しているようだが、日本ではどうだろうか。

八木 関西電力では、美浜発電所の事故を受けて、原子力事業本部を現地に移した。これは、地域に根差した事業経営と、本店機能による発電所支援を図ることが目的だが、軸足を移したことで、原子力事業運営に関する意思疎通、地域とのコミュニケーションで効果があったものと思う。

畠澤 福島の原子力事故以前、各サイトで働く東芝グループの人員は約6000人、特に、福島第一、第二発電所では2000人おり、そのうち8割は地元雇用だった。事故後でもいえるが、やはり、自らが先導して現場に入ることは、ある一定の信頼を得るということで、効果があると思う。


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