台湾の馬総統、龍門原発で明言 1号機を密閉管理、2号機は建設作業凍結

台湾の馬英九総統は4月27日、ほぼ完成していた龍門原子力発電所(ABWR2基、各135万kW)について、1号機は現在行われている安全検査が完了し次第、密閉管理状態に置くほか、同2号機の建設作業は凍結するとの方針を発表した。1号機は廃炉とするのではなく、今後必要となった場合に操業する可能性があると明言。原子力という選択肢を台湾のエネルギー・ミックスからはずしたわけではないことを強調した。

同原発を将来、稼働させるか否かの判断は国民投票により決定すると台湾行政院(内閣)が28日付けで発表しており、それまで同原発に追加予算を割り当てたり、両炉に燃料が装荷されることはないとしている。

また、現行の公民投票法では、投票案成立のためには有権者の50%以上が投票に参加した上で、賛成票が5割を超えなければならないが、この値を下方修正する特別規則の制定を求めた野党提案を行政院は却下。すべての国民投票と住民投票に現行法を適用すべきとの見解を示した。

建設の是非を巡って紆余曲折した15年間の工事期間中、現与党・国民党は一貫して同原発の操業を支持してきたが、福島第一原発事故以降、国民の間で反原子力運動がとみに高まり、26日以降は台北市で数万人が建設中止を求めるデモと座り込みを強行していた。

このため馬総統は同日、行政院の江宜樺院長(首相)を始め、台北市の市長や龍門原発が立地する新北市長など、国民党員である県市の首長15名と緊急協議を実施。2号機の建設凍結で世論の沈静化を図る一方、1号機は将来的な稼働の可能性を残しつつ、作業を停止・封印することとしたもの。今後は電力供給を確保していくための全国エネルギー会議を早急に召集することで行政院の承諾を得たとしている。

馬総統は、エネルギー源多様化のためには原子力を含め、電源のどれ1つとして放棄は出来ず、台湾にとってベストなエネルギー構成を探る必要性があると言明。密閉管理する1号機が国民に影響を及ぼすことはない点を保証した上で、必要なら使用するという選択肢は残すとしており、これは現在の国民と将来世代の国民のために下した判断であると強調した。

その上で、総統は今後、どのように節電を進め、新たなエネルギー源を開発するなど、原子力に代わり得る方法について国民とともに考えていきたいと説明。全国エネルギー会議の場で最良のエネルギー・ミックス構築のための意見を収集し、台湾の将来に貢献したいとの希望を述べている。

台湾で4番目の原発となる龍門原発は、台北市の近郊を取り囲む行政区である新北市に立地。建設を請け負ったGE社が1999年に建設工事を開始しており、1号機の圧力容器はバブコック日立、2号機については東芝が受注したほか、両炉のタービン発電機を三菱重工が受注していた。


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