地震リスク再評価で詳細分析 米規制委、優先実施する21原発を特定

米原子力規制委員会(NRC)は9日、中・東部のロッキー山脈より東側に立地する原子力発電所59サイトと未完成の1サイトのうち、21サイトを最新の地震リスクに基づく詳細分析を優先的に実施すべきサイトとして特定した。福島第一原発事故が耐震問題の重要性を浮き彫りにしたことから、サイト毎のリスク再評価に基づいて詳細分析を行い、現行の関連作業をフォローアップする考え。まず10サイト・18基の原子炉で2017年6月末までに詳細分析の結果を提出するよう指示しており、早急にアクションが必要と判断した場合は適切な対応を取る方針だ。

詳細分析の優先実施サイトを決めるに際し、NRCでは3月末までに各発電所から提出された地震リスクの再評価に関する最新情報を審査。オリジナルの設計プロセスで許容された地震動と各サイトで再計算した地震の新たな危険性を比較した。NRCの認識では、これらの発電所は設計上想定した地震の危険性を上回る十分な安全裕度を保有。さらなる改善作業を実施するとはいえ、これらすべての原発が安全に操業を継続できる点では確信があると強調した。

しかし、地震による新たな危険性が設計想定を超えていれば、その発電所では事故リスクに対応する変更部分を特定する詳細な分析作業が必要。安全上の重要機器を補強すべきか確かめる作業も短期的に行わねばならない。このためNRCは、発電所の構造物や配管、ポンプ、安全系に影響を及ぼす周波数の地震エネルギーがどのように伝わるかなど、複数のファクターに基づいて詳細分析の優先実施リストを作成したと説明している。

その結果、17年6月末までに詳細なリスク分析の結果報告を求める発電所として、NRCはキャラウェイ、クック、インディアンポイント、ノースアナ、オコーニー、ピーチボトム、ピルグリム、ロビンソン、ボーグル、ワッツバーの10サイトを指定。19年12月末までとする発電所は、ビーバーバレー、ブラウンズフェリー、カトーバ、ドレスデン、フェルミ、ハッチ、ラサール、オイスタークリーク、パリセード、V.C.サマー、セコヤーの11サイトとした。

これら21サイトの原発では、大地震の発生時に原子炉を安全に停止させるために重要な炉心冷却機器の評価と強化を目的とした優先アプローチ審査を年内に完了することになる。そして、当該機器を補強する必要性が明らかになれば、16年12月までに作業を終えなくてはならない。

NRCはまた、このほかの22サイトと未完成のベルフォンテ原発サイトについて、詳細なリスク分析が必要か現在検討中。これらに対しても年内に優先アプローチ審査の実施を求める方針で、地震リスクの詳細分析が必要な場合、それらは20年末までに結果報告書の提出が必要だ。

一方、中・東部の残りの16サイトは新たな地震リスクにも当初設計で責任が負えるとNRCは判断。さらなる分析の必要性を否定している。

なお、ロッキー山脈以西に立地する3サイトについては、地質学的な複雑さのために作業が1年遅延。NRCは来年3月までに再評価情報を提出させ、追加のリスク分析が必要か見極める計画だ。


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