「資金、納期の管理が重要」 仏国の廃止措置で講演会

原産協会は23日、L.ピケティ仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)原子力開発局原子力施設廃止措置・解体本部長(=写真)を迎え、仏国の原子力施設廃止措置計画に関する講演会を行った。同本部長は廃止措置分野における先達である仏国が取り組む課題、状況に応じて当初のシナリオを変更するなどの経験を次のように説明した。

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CEAの原子力発電部門は、発電、廃止措置・廃棄物管理、研究開発、原子力教育訓練の4つの部から成り、廃止措置研究には800人のCEA職員と2500人の事業者出向職員が従事している。原子力施設の廃止措置には総額100億ユーロ、年間約6億ユーロの予算を充てている。

サクレー、マルクール、カダラッシュ、グルノーブル、フォントネー・オー・ローズの5つの民生用原子炉と軍事施設UP1がCEAの廃止措置対象施設である。CEAは、廃止措置プログラムの安全な実施、コストと納期の順守を使命としている。

CEAでは、2006年施行の法律に基づき、施設を停止するとすぐに廃止措置を進める計画を立てている。廃止措置にあたっては、技術的・経済的な面を考慮しており、建物を壊すとは限らない。古い炉では過去の変更履歴が分からず、廃止措置を進めていく過程で判明するものもある。2010年に原子力事業者が廃止措置資金を貯めておく義務を負う協定をCEAと政府との間で締結した。

街の中心部分にあり施設も老朽化していたグルノーブルでは、1997年に研究炉を停止し、12年間、3億5000万ユーロを投じて15の建造物に廃止措置を行った。基礎部分に1平方センチメートルあたり10Bqの汚染の痕跡があったが、当初CEAでは周辺への影響は少ないと考え、建物を壊さず事務所として再利用しようと判断した。だが安全当局(ASN)からは建物を壊すよう指示され、解体することとなった。

アレバとCEAが共同で取り組むマルクールのUP1では2万7000トンの廃棄物量があり、2056年まで64億ユーロの費用がかかる。200グレイ/時という予想外の高線量だった部分もあり、ロボットでも入れないため、当初のシナリオを再考している。

モルビリエ処分場では極低レベル、ローブ処分場では低レベルおよび中レベルで短半減期の廃棄物を貯蔵している。さらに低レベルで長半減期の廃棄物については、放射性廃棄物管理機関ANDRAで2025年までにサイト選定を予定している。中レベルおよび高レベルの廃棄物で長半減期のものは、CIGEOプロジェクトで深地層処分する計画で当初2025年開始を予定していたが、国民討論の結果2028〜30年に遅れる見込みである。

研究開発については、日本原子力研究開発機構(JAEA)と廃止措置をはじめ幅広い分野で協力している。また国際廃炉研究開発機構(IRID)と福島第一汚染水や燃料デブリの取り出しについて提案するなどの協力を行っている。

廃止措置の最終的な終え方についてはASNと議論している。CEAとしては建物の廃止措置よりも放射能レベル低減に予算を使いたいが、現状は難しい。CEAは、グルノーブルの除染や廃止措置などを通して技術を保持しており、廃止措置に迅速により安くより安全に取り組みたいと考えている。その成果を国内だけでなく、国外でも活用していきたい。


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