〈Topic〉適切な用語の使用 表すべき意味とのズレも鳥井 そのほか、気になる用語、わからない言葉などがあれば、お話しいただけますか。 林 以前にお話しさせていただいたときから、「処分」という言葉が少し気になっています。例えば、「直接処分」、「地層処分」、「最終処分」という言い方をしますが、「処分」というのは、要らないものを正に捨ててしまう、始末してしまうというような意味合いがどうしても強くなります。「世代間倫理」とも関連しますが、今の世代が生み出したものを、人類の将来の生存環境に影響させないということで言うと、「処分する」というよりは「永久に管理する」という考え方のほうが、人類全体として見たときには、考え方としてより健全だろうと思います。実際には、そのように考えて安全性を重視して取り組んでいると思いますので、むしろ、そのように言ったほうが中身と合っているのだと思います。 鳥井 「処分」という言葉は、法律的に見ると、手順通りきちんとやるという意味合いもありますね。 林 法律の用語は、確かに、通常語と異なることがよくあります。 例えば最近話題のSTAP細胞をめぐる言葉使いにも、「悪意」や「不正」など、通常語としての使い方と法規や規定での使い方とがズレている例があります。例えば、科学者たちの言う「不正」は自分たちの定める規定などに照らして、やるべきでないこと、研究者の倫理に反することを言っています。ところが社会で一般的に言う「不正」は法律を犯すこと、処罰の対象になる犯罪行為といった意味合いが強くなります。社会的な「不正」の意味にとると、そのように決めつけるのは不当だという反応になる。これは特定の意味で用いられた語を通常語として解釈してしまったことから出てくる反応ですね。 原子力の用語に話を戻しますと、「中間貯蔵施設」という言葉がありますね。除染でできた土壌とか廃棄物を、最終的に処分する前に保管する施設のことでしょう。この「貯蔵」が普通の使い方と違う。「貯蔵」というのは必要なもの、大切なものを蓄えておくことをいうのが本来の使い方ですね。しかし「中間貯蔵施設」の場合、「貯蔵」されるのは危険で不要なものです。 「中間」という語も少し紛らわしい。この語は、位置や空間、また程度に関しても使う言葉です。意味が広いので、非常にわかりにくい。「中間貯蔵施設」が表そうとする意味に近いのは、例えば「臨時保管施設」。この方がはるかにわかりやすい。あるいは「一時(的)保管施設」という言い方ができるかもしれません。 お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |