〈Topic〉急増する輸入語の問題 無理な翻訳は逆効果林 輸入される外国語については3つに分けられると思います。(1)翻訳ができないもの、(2)翻訳しようとすればできるけれども、しないほうが良いもの、(3)戦略的にあるいはファッションとして使われるもの−です。(1)の例は、原子力の関連で言えば「プルトニウム」。これは翻訳できませんね。 鳥井 確かに、名前そのものですからね。 林 (2)の例ですと「アセスメント」という言葉。翻訳すれば「評価」「査定」になると思いますが、特定の意味、例えば、環境が変化する程度をきちんと客観的に示すことをいう場合には、「アセスメント」は、そのままのほうが良いとも考えられます。 (3)の例ですが、これは戦略とかファッションとして使うもの。例えば「オーサー」「ドキュメント」など。これは、こういう言葉を使わなくとも十分に済むわけですね。その中でも、ファッションはまだ可愛げがある。格好よく見せたいだけだから無邪気ですが、戦略的に使う言葉には、ちょっと気をつける必要があります。前出の「ベースロード電源」は若干その気が感じられる。新しい言葉の力で、(原子力は)必要だという気持ちを起こさせようとか、もっともらしい言葉で、納得させようとしている感じがある。しかし、こういう戦略は失敗することが多いように思います。あまりそういう言葉に頼らないほうが良い。外国語を使うのは、避けられないことですが、その効果をよく見極め、注意しながら使うことが大切だと思います。 鳥井 要するに、一番悪いのは、無理矢理翻訳して誤解されること。 林 そうですね。言葉によっては、そのまま使ったほうが、わからないから調べる分、良いかもしれません。「推読能力」が母国語と外国語は全然違います。新聞を読んでいて、わからない言葉があっても、母国語なら文脈でこうだろうと思って、推理しながら読んで理解してしまいます。そういう推読力が働きます。ところが、外国語はなかなかそのようにはいきません。しかし、その推読力には落とし穴もあるのです。翻訳して日本語にすると、適切な訳ならいいのですが、そうでない場合は、推読によって誤解が生じやすくなる。 鳥井 翻訳したために、独自の意味を持ってしまうわけですね。 林 そうです。そのまま外国語だと、必要に迫られればその意味を調べます。その結果きちんと伝わる。そこが面白い点でもあり、難しいところでもあります。 鳥井 おっしゃる通りですね。お話しは尽きませんが、ここまでにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(了) お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |