【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(31)土壌からの被ばくに注目し実効線量計算国連科学委員会が4月に発表した「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルとその影響(最終報告書)」を受け、今回から3回にわたり「公衆の外部被ばく線量評価方法」、「公衆の被ばく線量」、「作業員の被ばく線量」について、順次、紹介します。 ゆりちゃん 国連科学委員会(UNSCEAR)が適用した「公衆の外部被ばく線量評価方法」には何か注目すべきものがあったのですか。 タクさん 福島第一原発事故による公衆の主要な被ばく経路は、(1)大気中を移動する放射性雲による外部被ばく、(2)放射性雲の吸気による内部被ばく、(3)土壌に沈着した放射性核種による外部被ばく、(4)食物や水の経口摂取による内部被ばくです。国連科学委員会はこれらの被ばく経路に従い、福島県および東日本の近隣県の住民について、重要臓器である「甲状腺」、「赤色骨髄」、「女性の乳腺」での吸収線量(等価線量)、および「全身の実効線量」を推定しました。その結果、公衆が生涯(80年)にわたって受ける被ばくの主な原因は、「土壌に沈着した放射性物質から受ける外部被ばく」であることが分かったのです。 ゆりちゃん 「公衆の外部被ばく線量評価方法」について、もう少し詳しく教えて下さい。 タクさん 日本では、航空機サーベイによる空間線量率の実測値を「個人線量」とみなし、これに屋内外の滞在時間、および家屋の放射線遮蔽係数を掛け合わせて、年間の事故による「追加被ばく線量」を推定しています(本紙6月5日付け「広く利用されている放射線30」参照)。これに対して国連科学委員会は、放射線の“がんリスク”を表す「実効線量」を求めることとし、具体的には「土壌に沈着した放射性物質濃度(放射能濃度)」の実測値から理論的に計算する方法を適用しました。公衆の外部被ばく線量は、(1)個人の体格(年齢による)、(2)屋内外の滞在時間(居住ファクター)、および(3)家屋の放射線遮蔽係数に依存します。同委員会は公衆を3つの年齢グループ、すなわち成人(2011年時点で16歳以上)、10歳(同時点で6〜15歳)、1歳(同時点で5歳以下)に分け、成人の集団に対してはさらに、“主に屋外で働く人”と“主に屋内で働く人”に細分化しました。実際に使われたデータを見てみましょう。先ず、居住ファクターですが、表1に示す通り、屋外労働者と屋内労働者(年金受給者を含みます)、および子供に分けて、屋内外の滞在時間が決められています。次に、家屋の遮蔽係数ですが、これは日本の標準家屋、すなわち(a)1階から3階の木造家屋、(b)1階から3階の木造防火(しっくい)家屋、および(c)コンクリート高層住宅に対してそれぞれ0.4、0.2および0.1という遮蔽係数が与えられました。個々人の被ばく線量は、生活(行動)パターン、年齢および居住環境によって大きく変わります。 (原産協会・人材育成部) お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |