改良標準化の経緯考察 経済産業研プロジェクト 産業政策の史的研究

経済産業研究所のプロジェクトで「通商産業政策・経済産業政策の主要課題の史的研究」の一環として取りまとめられた学習院大学経済学部教授の石井晋氏による国内原子力発電開発の歴史的経緯を考察した論文が、同研究所のホームページ(http://www.rieti.go.jp/)で公表されている。

「原子力発電の効率化と産業政策−国産化と標準化」と題するこの論文では、1960年代の原子力機器の国産化政策と、70〜80年代の改良標準化政策を中心に、原子力発電に関わる産業政策について、特徴を分析している。

その中で、電力会社と電機メーカーによるPWRグループ(北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力、三菱重工)と、BWRグループ(東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、中国電力、日立、東芝)の形成・固定化の変遷について、島根原子力発電所建設計画における中国電力と日立との協同研究により、国産化率が90%を超えたプロセスなどから説明している。

また、改良標準化政策では、70年代初頭からの運転トラブルや故障に伴う設備利用率低迷に端を発した原子力機器国産化政策の質的向上として、75年からの通産省による軽水炉標準化計画の推進を述べており、BWRでの制御棒駆動機構と燃料交換機の自動化、PWRでの蒸気発生器自動検査機器採用などの改良を取り入れた第1次改良標準化、続く81年までの第2次標準化計画の実施で、設備利用率の顕著な回復がみられたとしている。

論文は、さらに、81年からの「日本型軽水炉」確立を目指す第3次改良標準化をあげ、これまでの文献などを引用し、国の産業政策と電力業界の意向との相違や、フランスの原子力開発体制との比較を論じている。しかしながら、「標準化」は次第に、トーンダウンしていき、これに替わって、新規建設の困難から、定期検査期間の短縮などによる稼働率向上が重視されるようになったことを、総合エネルギー調査会原子力部会が84年にまとめた中間報告中の「軽水炉の技術高度化の必要性」に関する記述を引用し述べている。

その後、86年3月にまとめられた原子力部会報告では、稼働率の向上とともに、経済性、運転性、信頼性、安全性の向上を目標として、ABWR、APWRの技術開発課題が列挙され、結果、「電力会社と電機メーカーとの固定化を前提とした開発の推進」という体制が定着したなどと述べている。


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