福一事故炉でJAEA レーザー使い内部把握 基本技術の成立性確認 分光し組成分析が可能福島第一原子力発電所の事故炉内部の、特に溶けた燃料の状態を調べることは、廃炉の作業を進めるうえで最重要課題のひとつになっている。耐放射線ファイバスコープを使ってレーザーを利用した内部観察できる技術を日本原子力研究開発機構(JAEA)の研究グループが開発、基本的な技術の成立性を確認した。 想定される観察の現場は、高線量の環境下で、放射線被ばくへの対応がまず必要。またノイズを低減し、状況分析に必要なデータを得ることで、迅速にその場の状況を分析できれば非常に有用なツールになる。そこでJAEAの研究者が各々の分野から知見を持ち寄った。耐放射線ファイバスコープによる炉内の観察技術は高速実験炉の常陽がトラブルの際に開発した技術を応用した。またレーザー光を用いた分析技術は量子ビーム応用研究の専門家が装置を開発、また核燃料物質の組成を分析するデータや手法等の知見を基礎工学研究の専門家が研究開発した。 これまでに高い放射線環境下で、ファイバを通じてレーザー光をあてて観察し、跳ね返った光を分光することで観察対象の組成の分析が可能であることを確認した。計測に要する時間は10秒たらずだ。ファイバスコープは耐放射線性(目標は10キログレイ/時で1日以上使用可能)をもち、想定される水中での観測のため防水仕様で、伝送損失を抑え、光検出可能な性能をめざしている。 レーザー光による計測と分析のための装置(=写真)は可搬型にしてコンパクト化、LIBSという手法で原子固有の発光現象をとらえ迅速に組成分析を可能とした。光ファイバ先端の集光ヘッドは水中での観測を可能とするため、泡を生成することで気相中で観察対象にレーザー光をあてる工夫をし、実験を通じて観察が可能なことを確認済みだ。 得られた分光データは、JAEAが得意とする基礎工学分野の長年の関連データベースを活用し、対象物の組成分析を行える見通しをつけている。また一部にMOX燃料が使用されている状況を踏まえ、研究所内の燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)に設置されたグローブボックスを改良してプルトニウムを含む対象物の観察・分析手法も開発した(文科省原子力システム研究開発事業の成果を活用)。事故炉内に想定されるほとんどの物質の分析に短時間で結果を出すことができるメドを付けている、という。今後の課題は、観察データの精度向上と同時に、作業ロボット等に観察用の光ファイバを装着するなどして事故炉内にどうアクセスするか。現在はJAEAの自主研究開発で行っている一連の技術を、今後は国の廃炉ロードマップに取り入れてもらうなどして、現場での適用を視野に入れた技術開発へと段階を進めたい考え。今後の廃炉工程全体を考えると、保障措置等の観点から燃料デブリなどの組成分析はいずれ必ず必要になることもあり、組成分析のその場観察という特長があるこの技術開発の有用性が注目される可能性がありそうだ。 お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |