「ドイツだからできる」 欧州と比較し エネ政策考えるシンポ

ドイツの脱原発政策から問題を提起し、日本のエネルギー政策について考えるシンポジウムが6月23日、都内のホテルで開かれた(=写真)。有識者からなる日本エネルギー会議の主催。

シンポジウムではまず、作家でドイツに32年在住する作家の川口マーン惠美氏が講演を行い、福島第一原子力発電所の事故を受け、同国が決定した22年までの脱原発、再生可能エネルギー転換の政策に関して、現在、多額の助成金の影響などから、供給が需要を上回っても電気料金が上昇する逆転現象が生じている現状を示し、「ドイツだからできる壮大な実験」として、日本のエネルギー政策に対し冷静な見方をするよう警鐘を鳴らした。

これを受け、欧州のエネルギー事情に詳しい海外電力調査会の伊勢公人氏は、天候によりドイツでは卸電力価格がマイナスになる日があることをあげ、「どういう市場設計をするか」などと議論の必要を指摘した。

一方、原子力回帰に向かう英国のエネルギー状況に関し、英国大使館のナオミ・カウワン氏は、自国の原子力推進世論の高揚について、電力供給の信頼性、気候変動、化石燃料生産量の急減などが背景にあると述べた。

この他、フランスのエネルギー事情に関する議論も受け、今後の日本におけるエネルギー政策のあり方について、IEA前事務局長の田中伸男氏は、原子力発電に反対してきた環境保護派の人々が推進の立場に変わっていく経緯を紹介したドキュメンタリー映画「パンドラの約束」に触れ、CO排出量削減に向けた世界的な動きから、「もう一度原子力を考え直すべき」としたほか、化石燃料も、中東だけに依存せず、ロシアからLNGパイプラインを敷設するなど、多様なエネルギーオプションを持っておく必要を強調した。


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