【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(31) 福島県住民への健康影響小さく検出不可国連科学委員会(UNSCEAR)は4月2日、「東日本大震災後の原発事故による放射線被ばくのレベルとその影響(最終報告書)」を発表しました。昨年の第68回国連総会では、その概要が報告されるに留まっていましたが、今回初めて、「科学的付属書A」が公表されました。 ゆりちゃん 公衆の被ばく線量評価方法について教えて下さい。 タクさん 国連科学委員会は地域を次の4つすなわち、(1)事故後、数日から数ヶ月の単位で避難した福島県の地区、(2)避難が行われなかった福島県の行政区画、(3)福島県に隣接する県(宮城県、栃木県、群馬県、茨城県)および福島県に近い県(岩手県、千葉県)、(4)その他の都道府県全て、に分類しました。また評価の対象年齢を、(1)20歳(全ての成人)、(2)10歳(5歳以上の全ての小児)、(3)1歳(5歳未満の全ての幼児)としました。そして同委員会は、「事故後1年間の積算被ばく線量」の評価に重点を置き、標準的かつ国際的に認められたモデルとデータを使って、放射線感受性の高い臓器(甲状腺、赤色骨髄および女性の乳房)の吸収線量(単位:グレイ“Gy”)、および全身の実効線量(単位:シーベルト“Sv”)を推定しました。 ゆりちゃん 福島に住む人達の被ばく線量はどのように評価されたのですか。 タクさん 表1は、事故後1年間の“平均実効線”量および“甲状腺吸収線量”を評価した結果です。線量は、3つの主要な被ばく経路(外部被ばく、吸入による内部被ばくおよび経口摂取による内部被ばく)の合計を表しています。その結果、(1)避難者および避難区域外で事故の影響を最も受けた成人の平均実効線量は数mSvから約10mSvの範囲であり、(2)甲状腺吸収線量は成人で最大約35mGy、1歳児で最大約80mGyと推定されました。 ゆりちゃん 福島に住む人達の健康影響はどのように評価されたのですか。 タクさん まず通常の固形がんですが、「ICRPの“しきい値なし直線モデル”に基づけば、約10mSv(実効線量)であっても、がんリスクの若干の上昇はあるとみなされる。しかしその上昇分は、日本人の自然発生によるがん罹患リスクに比べ小さすぎて検出できないであろう」と評価しました。甲状腺がんについては、「チェルノブイリ事故後の住民の甲状腺被ばく線量と比べ、福島県での被ばく線量はかなり低く、チェルノブイリのように甲状腺がんが大幅に増加するとは予想されない」と評価しました。また「不妊や胎児への障害、および白血病や乳がんについての増加、ならびに遺伝性の影響は予想されない」と評価しました。国連科学委員会はチェルノブイリ事故の経験から、「福島第一事故によって生ずる放射線被ばくは、チェルノブイリ事故後の被ばくより極めて低い。このことは、福島第一事故の結果として生ずる放射線被ばくによる一般公衆の健康影響の発生率の増加も、おそらく識別可能ではないだろう」と総括しています。 (原産協会・人材育成部) お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |