川内1、2号の審査進捗に際し 日本原子力産業協会 理事長 服部 拓也

九州電力川内原子力発電所1、2号機について16日、設置変更許可申請に対する審査結果を取り纏めた審査書(案)が示された。今後再稼働に向け工事計画認可、保安規定認可および使用前検査などの法令上の手続きに加え、地元の理解を得る必要があるものの、1つの大きな節目を迎えることができたといえる。

再稼働に向けては未だ原子力に対する国民の信頼が十分に回復していない状況を踏まえ、事業者、国ならびに規制当局に対して以下を要望したい。

第一に事業者においては、今一度自らが安全確保の一義的責任を負うことを再認識し、プラントの長期停止後の起動の際には、経験上トラブルの発生がつきものであるとの前提に立ち、機器類の点検といったハード面のみならず運転員の再訓練などのソフト面からも、想像力を最大限働かせて念には念を入れた対応をお願いしたい。特に安全性強化の観点から新たに追加された機器やシステムは、初めての運用になることから細心の注意が必要である。再稼働に際して、仮にトラブルが発生した場合には、速やかに情報を公開することは当然であるが、起動プロセスの進捗状況を適宜公開するなど透明性を高めることも安心の観点から必要であろう。また、事業者が規制の要求を満たすことに満足せず、常に安全性の高みを目指した自主的かつ継続的な努力の必要性が強調されてきたが、この点について、一昨年11月に設立された原子力安全推進協会(JANSI)による独立した評価、提言などの活動にも期待したい。

第二に国においては、プラントの再稼働にあたっては「国が前面に立って理解活動を進める」旨、エネルギー基本計画に明記されている。立地地域をはじめ広く国民に対し、今後具体的にどのような道筋を経て再稼働を実現するのかをできるだけ早い時期に明らかにし、理解活動を進めていただきたい。国内の原子力発電所の再稼働については、国民の関心が高いだけでなく世界も注目していることから、国内外に対してエネルギー基本計画の実現に向けた日本の決意を示すことにもなろう。

そして第三に規制当局においては、今回の審査結果について自ら立地自治体をはじめとする関係機関に対し、わかりやすい説明に努めていただきたい。これは、原子力発電所の安全性に関する科学的・技術的判断を国民から負託されている機関として果たすべき責務である。また今回、川内原子力発電所の審査に一定の進捗が見られたことで、適合性審査の雛形が示されたことになり、後続するプラントの審査が円滑に進捗することを期待している。

最後に、原子力安全の向上という共通の目標に向けた取組でありながら、これまでの経過を見ていると、規制当局と事業者のコミュニケーションが円滑だったとは言えない。規制当局と事業者は、お互いの立場を尊重しつつ、相互に信頼できる関係を構築し、意思疎通を深め、より効果的で合理的な規制、効率的な審査を実現しなければならない。より高い安全性を目指した事業者の自主的な取組と、国民から見てわかりやすく透明性を確保した規制を実現することが、原子力に対する「信頼の回復」につながるものと確信している。

(本メッセージは紙面の都合上一部割愛、全文は原産協会ホームページ〈http://www.jaif.or.jp/〉に掲載)


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