リスク理解への工夫を SNWシンポ 空気で決まる政策警鐘

日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)は2日、第15回シンポジウム「責任ある原子力総合政策を!――第4次エネルギー基本計画の具体化にむけて」を東京大学で開催し(=写真)、約250人が参加した。共催は、エネルギー問題に発言する会、エネルギー戦略研究会(EEE会議)。

基調講演では、澤昭裕・21世紀政策研究所研究主幹が、現在の原子力をめぐる状況はかつてなく厳しいとし、中長期的に原子力を維持するためには、(1)「原子力は日本の国力・国益・地域振興にとって『特別に』必要」との共通認識に基づいた政治(国・自治体)の意思(2)長期・安定的な資金の確保を可能とする確実なファイナンス(3)現場でイノベーションを継続的・積極的に導入できるような技術の新陳代謝を促進する制度デザイン――を必要条件として挙げた。

また、品田宏夫・刈羽村長は、経済の大切さに無頓着なまま原子力の将来がメディアに作られた空気に動かされてしまっている状況を憂い、立地地域には首都圏に電気を送る義務があるわけではないとして「消費地がきちんと考えていくべき」と強調した。

2氏に加え3名のパネリストが加わったディスカッションでは、伊藤隆彦・日本原子力文化財団理事長が、リスクの認識は人によってかなりの違いがあることに触れ、高校生がセミナーで放射線測定を行った体験が安全な線量を実感することにつながった例を挙げた。

また、越智小枝・相馬中央病院内科科長は、医学的には正しいはずの避難指示が物流・インフラなどの途絶を招いてしまったことなど、放射線以外による被害が大きかったことを指摘。健康影響についての理解促進に努めているが、正しい数値を示すだけでは恐怖をなくすことができない状況を語り、「誰が、何を、いつ、どのように」コミュニケートしていくかが大切だと強調した。

作家/コメンテーターの神津カンナ氏は、日本人は「無」「ゼロ」などにこだわりすぎて合理的な物差しを持つのが苦手だとし、この数値の場合にはこのような結果になるという選択肢を示すような具体的説明のないまま、切り取られた情報しか提供されないことが、空気や感覚でしか物事を選べない状況を生み出しているとした。


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