【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(34) 肺がんでは成人のほうが被ばくの影響大国連科学委員会は昨年10月、UNSCEAR2013年報告書「電離放射線の線源、影響及びリスク」の科学的附属書Bとして、「子供の放射線被ばくの影響」を公表し、23種類の異なる“がん”について子供と成人の“放射線感受性”の違いを精査(レビュー)しました。 ゆりちゃん 最初に“子供”と“放射線感受性”の定義(意味)を教えて下さい。 タクさん 科学的附属書Bでは、用語“子供”を“成人”に対する用語に対比して使用しています。したがって、国連科学委員会が調査した科学文献は20歳未満の人に対するもので、幼児、子供および思春期の人が含まれています。がんの誘発に関する用語「放射線感受性」とは、放射線による腫瘍発生率のことです。 ゆりちゃん 子供は成人よりも放射線感受性が高いと聞きますが本当ですか。 タクさん 子供のほうが成人よりも、常に2〜3倍、放射線感受性が高いと思っている人は多いです。原子放射線の影響に関する国連科学委員会は、最新のUNSCEAR2013年報告書で、「子供が成人よりも被ばくの影響を受けやすいとの一般的な認識は、部分的には正しい。しかし、いくつかの健康影響に対しては、子供のほうが成人よりも抵抗力がある」と説明しています。具体的には、23種類の異なるがんについて、子供と成人のどちらが発症しやすいか、精査しました(表1参照)。その結果、(1)白血病、甲状腺がん、皮膚がん、乳がんおよび脳腫瘍を含む約25%のがんについては、子供のほうが成人よりも放射線感受性は明らかに高い、(2)逆に、肺がんを含む約10%のがんについては、子供の方が成人よりも放射線感受性は低い、(3)ホジキンリンパ腫、前立腺がん、直腸がんおよび子宮がんを含む30%のがんについては、子供と成人の違いはほとんど認められないと結論し、「子供のほうが成人よりも、常に、放射線感受性は高い」とする曖昧な考え方を否定しました。 ゆりちゃん 発がんには「被ばく線量の大きさ」も影響しませんか。 タクさん いいところに気がつきますねえ。昨年11月、環境省は放射線医学総合研究所に委託する形で、放射線の基礎知識、放射線による健康影響に関する科学的な知見、それから関係省庁が発信している情報等を収集・整理し、「統一的な基礎資料」をまとめました。その中に、原爆被爆者のがん罹患リスクを、男女別、被ばく時年齢別に分類・整理した部分があります。そこでは、「高線量域(500mSv以上)では、子供は成人より放射線感受性が高いことは明らかである。しかし、低線量域(500mSv以下)では、リスクの変化があったとしても小さすぎて疫学的手法では検出できず、科学的知見は未だ十分でない。そこで、放射線防護の観点からは、どの線量域でも、子供は成人より3倍程度感受性が高いとみなすべきであると考えられています」と記載されています。 (原産協会・人材育成部) お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |