「原子力、今後も主要電源」 仏CEA幹部が来日し、講演

原産協会は7月29日に会員フォーラムを開催し、来日中だった仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)のC.ベアール原子力開発局長から仏国の原子力開発を巡る状況と今後の方向性について講演を賜った(=写真)。

同局長によると、仏国はEUが定めた2020年までの域内における3つエネルギー政策目標を完全に履行する方針で、エネルギー・ミックスにおける2本柱として原子力と再生可能エネルギーを設定。4月にエネルギー大臣が内閣に提示したエネルギー移行に関する法案でも、オランド大統領が閉鎖を公約していたフェッセンハイム原発の名が閉鎖予定と明記されなかったほか、必要とあれば目標の見直しを行うことも謳われるなど、原子力の立場は良くなったとの見方を示した。

これに加えて同局長は、原子力の温室効果ガス排出量がその他の電源より少なく、仏国のエネルギー自給率が原子力によって1973年の23%から昨年に50%に上昇したこと、発電コストでその他の電源より経済的な競争力があるなどの事実をグラフで明示。これらの点からも、原子力は今後も仏国の主要電源として残り続けると結論づけた。

現在、仏国で実施している研究開発については、既存の軽水炉の寿命延長やクローズド燃料サイクルの継続、高速中性子炉関連のものがあると紹介。この中でも将来に備えた高速中性子炉開発として、(1)ナトリウム冷却(2)ガス冷却――の2タイプについて進めており、ナトリウム冷却型のASTRIDは2012年に予備設計・第2フェーズへの移行が決まり、15年から詳細設計に入る計画だとした。

同炉は増殖炉として開発しているのではなく、長寿命の高レベル放射性廃棄物(HLW)を核変換することにより放射性毒性を下げ、最終処分場の使用面積を大幅に低減するのが主な目的。クローズド燃料サイクルは持続可能な原子力開発におけるカギの1つであり、高速炉開発はそうした戦略を長期的に支える要でもあると同局長は説明した。

ただし、実際の建設を行うかは19年を目処に決定する予定。建設が決まった場合は25年にも運転を開始するとの見通しを示している。


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