独のエネ市場 直面する課題 「いいとこどり」難しい エネ研報告書 電気料金の高騰など招く

脱原発のお手本とも評されるドイツのエネルギー政策が岐路に立っている。日本エネルギー経済研究所(エネ研)は「ドイツのエネルギー市場の課題と欧州での供給力確保・送電投資に向けた取り組み」と題するレポートをまとめ、送電網の整備や電力料金の上昇等の課題を前に大きな見直しを迫られているとの認識を示している。

ドイツではメルケル政権の野心的なエネルギー政策によって急速に再生可能エネルギーが普及し、2012年の総発電量に占める割合が23.5%に達した。固定価格買取制度(FIT)の導入で太陽光発電が急速に普及したことが一因だ。また電気料金が、2006年から13年にかけ55%上昇し、家庭用電気料金に対する賦課金は電気料金の18%にまで膨らんだ。

エネ研のレポートは、再生可能エネルギーの急速な普及によるドイツの課題を整理し(1)卸電力価格の下落による天然ガス火力の停止/廃止(2)バックアップ電源等の不足による容量市場の創設(3)再生可能エネルギー源の偏在による送電線への投資−−の3点に整理した。

レポートによると、ドイツでは急速に拡大する再生可能エネルギーが電力市場に流れこんで天然ガス火力などの価格下落を招いた結果、電力会社が採算のあわない天然ガス火力発電の停止や廃止を相次ぎ打ち出している。再生可能エネルギーのバックアップ電源として期待されるガス火力発電所の停止は供給力不安を浮上させ、予備力の確保という課題が浮上している。欧州大でもこの供給力不足の問題があり、容量市場の創設で電源不足に対応する対策が検討されているが、国境を越えた容量市場が相手国に「歪み」を起こすなど課題がある。ドイツでは容量市場の創設の効果そのものに懐疑的な見方があって検討中という。欧州大での対応の足並みはそろっていないのが現状だ。

ドイツの送電線網については、地域に偏在する形で風力等の電源が普及し、特に南北間の送電網強化が大きな課題になっている。風力など立地条件により地域が偏るためだ。また余剰風力が送電網を通じて他国に影響する技術的な問題が起きている。同国の送電網の需要調整システムに起因するという。

今後スマートグリッド化などの計画があるが、具体化には時間がかかる見込み。計画運用することが難しい再生可能エネルギーの急速な普及に対し、問題解決への対応が追い付かない現状にある。

同国の大手電力会社RWEは2013年12月期の通期決算で大幅な赤字に転落し話題になったが、ドイツでは電力会社が事業の採算性を低下させている。それが、再生可能エネルギーのバックアップとなる天然ガス火力発電所の停止を招くという構造的な問題に連なっているという。

さらに2013年のCO排出量は推計で8億3400万トンと過去5年間で最高値になることが連邦環境省から発表され、環境面でも問題なしとは言えない。

レポートは「原子力低下、CO排出量の大幅削減、電気料金の値上げ抑制といった『いいとこどり』の解を見出すことは難しい」と指摘する。

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ドイツのエネルギー政策が直面する課題は、日本にも多くの教訓を示すものと考えられ、同国の政策から、今後も目が離せない。


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