科学者、行政に助言を 被ばく影響低減にむけ 日本学術会議が提言

日本学術会議の東日本大震災復興支援委員会は19日、長期的な放射能対策に関連し、行政と学術の適切な関係性構築と、科学者による地域支援を促す提言を発表した。同委員会は、12年4月にも放射能対策で提言を出しているが、原子力規制委員会の発足や、政府、国会他の原子力事故調査報告の公表など、新たな状況を踏まえて、放射線被ばくによる健康影響低減策をより効果的なものとするため、5項目の提言を追加したもの。

提言ではまず、事故に起因する放射性物質の幅広いモニタリングと移行の予測を行い、その結果に基づいて人の健康や生活環境への影響を、より正確に予測するためには、学際的かつ総合的な解析が必要との考えから、「学術専門家が参画する長期的で府省横断的な放射能調査・研究体制の必要性」(提言1)をあげ、現状では、原子力規制委員会に下に置かれることが望ましいとしている。

さらに、「原子力規制委員会に対する科学者コミュニティの貢献の必要性」(提言2)を認識し、原子力規制行政に対する国民の信頼を再構築するため、科学者コミュニティが行政の活動を客観的に評価することも重要だとしている。

また、発災時、放射性物質の放出や拡散の情報が十分に公開・共有されておらず、適切に解明されていないとして、「初期被ばくの実態についての学術的解明の必要性」(提言3)をあげ、炉内事象他に関する知見をもとに、大気中放射性物質濃度の再現シミュレーションの高度化を図るなど、必要な研究を充実化すべきとしている。

地域支援に関しては、「健康管理に関わる調査の継続と多様な配慮の必要性」(提言4)、「地域支援に関する学術的活動の強化」(提言5)を掲げ、帰還の必須条件とされた線量(20mSv/年)と除染の長期的な目標値(1mSv/年)との関係や、適切な除染のあり方、地域ごとの環境回復シナリオ策定、除染廃棄物の保管・中間貯蔵・最終処分といった一連の課題に対し、科学者コミュニティが地域の当事者とも協働し関与するよう努めなければならないとしている。


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