米エネ省が新たな原子力融資保証 126億ドル分の招請案を公表

米エネルギー省(DOE)は9月30日、先進的な原子力プロジェクトを対象に、新たに最大126億ドルの政府融資保証を提供する招請案を発表した。小型モジュール炉(SMR)や次世代技術による原子炉建設など、その開発規模や革新的技術であるがゆえに商業化に十分な資金を確保できないプロジェクトに必要な財政支援を提供することで、米国を将来的に低炭素社会へ移行させるとともに、クリーン・エネルギーの利用促進を通じて供給の安定化や雇用促進を図るというオバマ政権の「全エネルギー資源の活用戦略」を下支えしていくのが目的。今後30日間のパブリック・コメント募集を経て、最終的な招請範囲などを特定する考えだ。

DOEは2008年に原子力発電施設枠として185億ドル分を盛り込んだ第2次の融資保証招請書を出状。今年2月に、ジョージア州で建設中のA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機増設計画に対して、プロジェクトの参加企業2社分の融資保証として65億ドルの付与が正式決定したが、2005年エネルギー政策法に基づいて融資保証を適用された原子炉新設計画としては現在唯一のものだ。適用を受ける際に必要な高額の信用保証料などがネックで、原子力関連ではこのほか、仏アレバ社がアイダホ州で進めているウラン濃縮工場建設計画に20億ドルが適用されたに留まっている。

今回の招請案でDOEは、既存設備の革新的な改修計画を適用対象として明記。前回の招請で開発が加速された再生可能エネルギーや電気自動車技術のみならず、原子力技術分野でもボーグル計画に続く適用が実現するよう、以下の4つの技術分野を提案している。

すなわち、(1)「先進的原子炉」=受動的安全系やモジュラー工法、熱効率、燃料技術等の部分で革新的な設計改善が行われた原子力計画(2)「SMR」=出力30万kW以下の革新的原子炉技術開発計画(3)「既存施設の出力増強と改修」=既存原子炉の効率化や出力上昇のための改善、今後の操業で必須となる重要な改造を目的とした計画(4)「フロント・エンド」=ウランの転換や濃縮、および燃料加工工場などフロント・エンドの先進的施設の計画に20億ドル――である。

原子力産業界もコメント提出へ

米原子力エネルギー協会(NEI)は2日、DOEのこの計画を称賛すると発表。同時に30日以内に原子力産業界としてのコメントを提出する考えを表明した。

NEIはまた、DOE融資プログラム局のP.デビッドソン局長による「もしも地球温暖化に立ち向かうのなら、原子力が役割を果たさねばならない」との発言に言及。「今回の招請を通じて、安全性の改善された、温室効果ガスを全く出さない新しい原子力発電所の建設を支援することができるし、それこそが温暖化対策や我々のエネルギー・ミックス、そして米国の技術革新における勝利を意味する」と述べたことを明らかにした。


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