原子力機構 「ゼロリリース」目指し 廃棄物低減で国際シンポ

放射性廃棄物処理処分技術の将来展望を話し合う日本原子力研究開発機構主催の国際シンポジウムが9、10日、東京・江戸川区内のホールで開かれ、高速炉や加速器を用いた核種変換による減容化・有害度低減の研究開発の現状などについて国内外より報告を受け討論を行った(=写真)。

初日は、研究開発の報告に先立ち、元原子力委員長の藤家洋一氏が基調講演を行い、その中で、同氏は、(1)電気や水素エネルギーのような良質のエネルギーを生み出す(2)プルトニウムのような長期にわたる燃料資源を生産する(3)放射性廃棄物の放射能を消滅あるいは隔離する(4)原子炉を止める・冷やす・放射性物質を閉じ込めることで安全を確保する(5)核兵器に転用しにくい核拡散抵抗性のある燃料を生産する――の5つの機能を同時に満足する「自ら整合性のある原子力システム」(Self Consistent Nuclear Energy System:SCNES)の概念を掲げた上で、「ゼロリリースを目指す」放射性廃棄物低減への将来ステップを展望した。

また、研究開発に関する発表者らを交え、田中伸男氏(日本エネルギー経済研究所特別顧問)をモデレーターとして行われたパネル討論で、日本原子力学会会長の藤田玲子氏(科学技術振興機構)は、福島第一原子力発電所事故で国民の信頼が失われた状況下、高レベル放射性廃棄物処分を進めていく難しさを訴えかけた。

田中氏は、登壇者らに、原子力機構による「もんじゅ」や加速器駆動核変換システムの他、フランスが放射性廃棄物対策を主眼に開発を進めている高速実証炉「ASTRID」の活用について問いかけたのに対し、フランス原子力・代替エネルギー庁のベルナール・ブリ氏は、「産業界における成熟には長い時間がかかる」として、将来のよりよいオプションに向け、準備を進めておく必要を強調した。

さらに、田中氏は、SCNESにも示された金属燃料再処理を、福島第一の燃料デブリ処理へ適用する可能性にも言及しし、「災い転じて福となす」気概がなければ、世界からの信頼を得られないなどと、今後の日本の取組姿勢に期待をかけた。


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