女性の視点から議論 原産協会がシンポ コミュニケーションのあり方

原産協会は18日、東海大学校友会館(東京・霞ヶ関)で、原子力の理解に向けたコミュニケーションのあり方について、女性の視点から議論する特別シンポジウムを開催した。脳科学に詳しい黒川伊保子氏(感性リサーチ社長)が基調講演し、同氏と越智小枝氏(相馬中央病院)、中村多美子氏(弁護士)、武田美亜氏(青山学院女子短期大学)の4名の女性有識者によるパネル討論が行われた。モデレータは長谷川聖治氏(読売新聞科学部長)。

黒川氏は、講演の中で、男女の脳の回路特性・信号特性の違いから生じるものの見方など、「脳が創り出す男女のミゾ」について、自身の体験を織り交ぜながら明快に説き、女性脳は「共感してくれた相手に愛着がわく」ことなどを述べた。

討論で、震災時の医療活動の経験のある越智氏は、福島第一原子力発電所付近の病院で物流・インフラが途絶し患者に及ぼされた影響などを振り返り、「原発事故の健康被害は放射能による健康被害よりはるかに大きい」として、健康被害について幅広く語ることが風評払拭にもつながると訴えた。

中村氏は、リスクコミュニケーションに関する調査結果を紹介、社会問題に関して集団極化が発生する可能性などをあげながら、合意形成の難しさを指摘し、「相互に対立する多様な価値の問題をどう社会的に解決するのか」と問題を提起した。

科学技術コミュニケーション活動にも関わる武田氏は、「共感」の男女差に関するデータを紹介し、「女性と括ってコミュニケーションを考えることは得策ではない」ことを主張した上で、原子力に対する理解獲得を図る際、信頼の重要性をあげ、「相手の視点に立ってみる」必要を訴えかけた。

長谷川氏が次世代層へのコミュニケーションのあり方を問うと、黒川氏は、「家庭内で社会問題について話し合うことが非常に重要」と述べ、越智氏も、「正解のない問題では子供と大人が対等に議論できる」等と同感した。


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