大臣級会合、豪で開催 FNCAコーディネーター 町 末男

総合議長は豪マクファーレン産業大臣

11月19日シドニーで15回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合がオーストラリア主催によりシドニーで開かれた。安倍首相の衆議院の解散表明と重なった事も有り、共同主催の日本の山口科学技術担当大臣は残念ながら出席できず、ビデオで開会挨拶を行った。

主催国オーストラリアで原子力を担当するマクファーレン産業大臣が総合議長として開会の挨拶を述べ、次いで共同主催国日本の阿部原子力委員長代理が開会挨拶を行った。

マクファーレン産業大臣FNCAを高く評価

マクファーレン産業大臣は開会挨拶で、1990年3月日本の原子力委員会がアジア原子力協力会議を東京で主催して以来、FNCAは参加国の発展のために原子力科学技術の利用を推進して来たと高く評価し、15回を記念するこの会議でも重要な共通の目的達成に向けて議論したいと述べた。

次いで自国の政策について、オーストラリアは当面原子力発電を導入する計画はないが、アジアの諸国が導入を計画している事は十分認識しており、世界3位のウラン供給国であること、加えて、ANSTO(オーストラリア原子力科学技術機構)の研究炉による核医学診断に不可欠なモリブデン‐99の製造、シリコン半導体の製造など原子力利用によって世界に貢献していることを強調した。

「原子力エネルギースタディパネル」の新フェーズ

FNCAの重要な活動である「原子力エネルギースタディパネル」について、新たな第4フェーズを開始する事を決定した。目的は原子力の「発電利用」と「放射線利用」について、効果的推進政策と国際協力の役割を議論し、必要な技術的な情報を共有する。参加者は上級の行政官または専門家とし、2016年から開始する。

円卓討議「多目的研究炉の利用戦略」を議論

オーストラリア政府が、おおよそ350億円を投じて建設した20MWの多目的研究炉(ANSTOのOPAL炉)は極めて有効に利用されており、「成功モデル」として報告された。

カナダでのモリブデン‐99の製造が停止され供給不足が懸念される2016年以降に備えて、ANSTOは製造能力を大幅に増大し、3500Ci/週とする工事を行っている。これで世界の需要量の25%を賄うことが出来る重要な供給国となる。

また、濃縮ウランを原料としてモリブデン‐99を製造する際に生ずる高レベル放射性廃棄物を処理するための固化法として、ANSTOが開発した「シンロック法」を利用する実規模プラントを建設する事が注目される。シンロックは従来のガラス固化体に較べ放射性物質に対する密閉性が高く、固化体の体積も小さくできる利点がある。

討論では研究炉の多様な利用の価値が認識され、マレーシア、モンゴル、フィリッピン、タイなど大型炉を有していない国による既存炉の共同利用への期待が示された。また、研究炉を重要な基礎研究分野で利用するための人材育成協力の必要性が議論された。

各国代表演説―FNCA活動成果利用と原子力発電政策―

各国代表はFNCA活動での各国の主要な成果と原子力発電政策を報告した。その一部を紹介する。

FNCAプロジェクトの成果の利用については、特にマレーシアのアブ・バカル科学技術・革新省副大臣の(1)放射線を利用したバイオ肥料製造、(2)放射線育種による耐虫性のランの新品種、(3)オリゴキトサンの放射線加工による作物成長促進剤がマレーシアにおいて実用化が進みつつあるとの報告が注目された。

原子力発電では、バングラデシュのオスマン科学技術大臣が同国における最初の原子力発電プラント2基の建設を2015年に開始し20年に完成させる計画を着実に進めつつある事、これによって2021年に達成する発電容量2000万KWの10%200万KWを原子力で供給する事を明言された。一方、ベトナムはニントゥアン‐1については、2017年に建設を開始し、23年完成する計画が確定しているが、ニントゥアン‐2については建設開始時期は確定していないとの報告があった。

中国国家原子能機構のワン・イーレン副主席は、現在、原子力発電22基(20.10GW)が運転中、26基(28.45GW)が建設中である事、12年に建設を開始した高温ガス発電炉は計画通り進捗、また高速試験炉は2011年以来順調に発電している事を強調した。

FNCAの将来に向けて決議の採択

以上の報告・議論を踏まえて7項目の決議が採択された。紙面の都合で上記の紹介と重複しない3つの事項を記載する。

(1)各国大臣のリーダーシップとコーディネーターの積極的参画により、15年間の成果の上に更に活動を進展させる。

(2)「放射線育種」、「バイオ肥料」、「天然高分子の放射線加工」プロジェクトの優れた成果を農業生産向上に活用するため、上級行政官が農業省などとの連携を強化する。

(3)核セキュリティ文化の重要性を認識し、その醸成を人材養成活動により更に強める。


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