原子力規制委員会の見直し 日本原子力産業協会 理事長 服部 拓也

原子力規制委員会(NRA)は今年9月に発足から3年を経過するが、同委員会設置法上、3年以内に必要な見直しを行う旨定められている。

見直しにおいては、原子炉の40年の運転期間制限や、バックフィットに関する法令化などいろいろな個別具体的な事案もあるが、NRAの姿勢や運用といった観点から、世界的に評価の高い米国原子力規制委員会(USNRC)の「良い規制の原則」も参考にしながら、その在り方について改善すべき点として、以下4点を挙げたい。

第一に、事業者との対話を更に深めて欲しい。

既に事業者トップとNRAとの間で安全文化を中心とした意見交換が進められているところであるが、1日も早く相互に信頼できる関係を確立し、具体的な審査過程の場においても闊達な意見交換や議論が交わされることが望まれる。事業者との率直な意見交換や議論の先に、相互の信頼関係が築かれるものと考える。活断層の議論を例に挙げれば、審査等の場においてお互いの意見が十分に出され、双方納得いくまで議論が尽くされているかというと、そのようには見えない。また安全側の評価という指摘を多く耳にするが、それは科学的・技術的な見地とは異なるものである。客観的なデータに基づく科学的・合理的な議論が尽くされた上での相互に納得できる規制こそが、事業者による更なる安全性向上に向けた自主的な活動を促すものと考える。

第二に、効果的・効率的な規制活動に努めて欲しい。

規制活動はその達成により低減されるリスクの度合いに見合ったものであるべきで、複数の対応策がある場合には、リソースが最小となる選択肢をとるべきである。また、規制活動は厳格であることが大前提であるが、その判断に不必要な遅れを生ずることは避けるべきある。

エネルギー基本計画では、原子力は重要なベースロード電源と位置付け、NRAにより新規制基準に適合すると認められた場合には再稼働を進めるとしている。規制活動に効率的といった言葉を用いるのはややもすれば誤解を生むが、あえて言えば、そもそも安全規制は原子力を安全に利用するために行う行為であり、納税者、電気料金を支払っている消費者からは規制活動がより効率的かつ効果的になされることを求められる。もし規制活動が非効率なものであれば、リスク低減に見合わない規制や規制措置の遅れを生じ、これによって許認可を受ける側に不必要なコストが発生し、それが最終的に国民の負担になる。

第三に、NRAの運用の改善を図って欲しい。

NRAによる判断にあたっては、委員の過半数の賛成により議決を行うとしている。しかし、現状のNRAにおいては、5人の委員がそれぞれ担当の分野を持って審査や検討過程に直接関与していることから、委員会の場で、担当でない委員が疑問を呈し、議論ができるような状況でないように感じる。

5人の規制委員に求められるのは必ずしも専門性ではなく、それぞれの専門分野の深い知見に基づいた高い識見と様々な要素を考慮した総合的な判断であると考える。だとすれば、規制委員が審査や検討過程に直接関与するのは適切ではなく、委員会の場は規制の方向性を議論し、規制庁の職員が行った審査内容を最終判断する場にすべきと考える。なお、これを実現するためには、USNRCのように規制庁が行う日常の規制活動を評価し、規制委員の判断をサポートする複数のスタッフを配置することが不可欠である。

第四に、原子力規制庁職員の能力強化と体制の改善に努めて欲しい。

NRA及び規制庁は、短期間に新基準の策定とその後の適合性審査業務にあたって来られた。仄聞するところ、旧原子力安全基盤機構(JNES)の統合により要員が増強され審査体制が整備されたとはいえ、まだまだ十分ではない。このため、審査にあたる職員の疲弊感も大きく、効率的な審査の実施にも支障をきたしているのではないかと想像する。審査にあたる職員は知識だけでなく、規制基準の国際的な整合性を担保する観点からグローバルな感覚など高い能力が要求される。加えて一定の経験、とりわけ現場感覚を持つべきでありその養成は一朝一夕で成し得ないが、これらの観点から必要な能力を持った要員の確保に取り組んで欲しい。そしてこうした能力に見合った処遇を与えることが更なる有能な人材の確保にもつながるのではないか。

(本メッセージは、紙面の都合上一部割愛、全文は原産協会ホームページに掲載)


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