中国ハンドブック刊行 「世界市場制覇に動き出した中国」 テピア総研

日本や中国等に拠点を置くテピアグループ(劉炳義総裁)のシンクタンク、テピア総合研究所(港区虎ノ門)はこのほど「中国原子力ハンドブック2015世界市場制覇に動き出した中国」を刊行した。

福島第一原発事故後、中国政府は原子力政策の見直しを行い、内陸部での原子力発電所の着工を2016年以降に延期するとともに、新規に着工する原発では「第3世代炉」の採用を決めた。また、同事故は、中国が抱えている問題点を見つめ直すきっかけとなった。

それにしても、同事故からわずか4年たらずで、中国の原子力界は世界のセンターステージに立ったようだ。中国政府は20年の運転設備容量を5800万kW、同時点の建設規模を3000万kWにするとの目標を掲げているが、中国のエネルギー問題の権威、周大地・元国家発展改革委員会能源研究所長は、50年には原子力設備を4〜5億kWに拡大しエネルギー供給の柱にする必要があるとしている。

そうした巨大な開発計画の存在が中国の自信につながっている。習近平国家主席と李克強首相は13年から14年にかけて原子力(発電)外交を繰り広げた。中国がかかわっている国は20か国を軽く超える。新規に原子力発電を導入しようという国の最大の障害は資金の調達だ。中国は、その点にも怠りない。中国主導で設立が決まったアジアインフラ投資銀行の事務局長は、原子力発電プロジェクトへの投資も明言している。

しかし、何と言っても注目する必要があるのは、世界の先頭をきって開発している新しいタイプの原子炉だろう。高速増殖炉はもちろん、17年に実証炉が完成する高温ガス炉、トリウム資源の利用に焦点を定めた溶融塩炉、劣化ウランが使用できる進行波炉、回収ウランの利用をにらんだ先進重水炉。常に先の先まで考え、今から準備しておく中国の姿勢は日本としても見習う必要があろう。日本でも高温ガス炉に再び注目が集まっているが、中国では実証炉に続く60万kW実用炉の計画が続々と浮上している。どうやら中国は、高温ガス炉を輸出の切り札にする考えのようだ。まさしく「世界市場制覇に動き出した中国」。2012年版のハンドブック刊行から2年しか経っていないが、この間の中国の原子力界の変貌には目をみはるものがある。国内原子力産業の実態や輸出への取組など、「原子力強国」をめざす中国の全貌が明らかにされている。

しかし、同書によると、中国の原子力計画にまったく問題がないということではなさそうだ。日中関係がわずかながら好転の兆しを見せるなか、日本(企業)との協力の可能性はないのか。また、日本の原子力政策がどうあるべきかを模索するうえで、中国の動きから目を離すことはできない。

◇  ◇  ◇

「中国原子力ハンドブック2015−世界市場制覇に動き出した中国」1月16日刊行、A4版750ページ、頒価28万円(税・送料込)。問い合わせ:日本テピア・テピア総合研究所(電話03−6721−5505、FAX03−6721−5506)


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで