安全条約・外交会議でウィーン宣言 原則に法的拘束力盛り込めず

原子力安全条約(CNS)加盟国による外交会議が9日、同条約事務局を務める国際原子力機関(IAEA)のウィーン本部で開催され、福島第一原発事故を契機とする原子力安全のさらなる強化に向けた国際努力の一部となるウィーン宣言を全会一致で採択した。施設の安全性向上・維持のためのCNS目標を実行に移すよう各国を導く一連の原則を盛り込んだ内容。敷地外汚染を回避するための原則に法的拘束力を持たせるというスイス提案を決議するのが目的だったが、この件で77の加盟国すべてが合意に達するのは難しいとの判断から、議長が代替案での合意を取りまとめるに留まった。

スイスの提案は昨年春に開催された第6回CNS再検討会議に提出されていた。要件により格納容器の健全性を維持する重要性が国際社会で何度も指摘されていたにも拘わらず、法的拘束力のある国際文書で実行されることはなかったと同国は主張。このため再検討会議では、CNSにおける敷地外汚染回避の原則が法的拘束力を持つよう第18条の修正について外交会議で審議すること、外交会議の少なくとも90日前までに加盟国が意見交換し、規則手続きの採択準備を進めておくことが決定していた。

外交会議の議長を務めたアルゼンチン常任代表のR.グロッシ大使によると、加盟国は少なくとも8回の事前協議によりスイス提案の分析や規則案の調査を行った。しかし、原子力安全の強化において加盟国全員が不可欠と考える全会一致決議を、スイス提案について出すのは難しいとの結論に至ったとしている。

「ウィーン宣言」では放射性物質放出事故の発生防止とそれに付随する影響の緩和というCNSの目標実行のために、次の原則が盛り込まれた。すなわち、(1)新規の原子力発電所は、起動・運転時の事故発生防止、および万一事故が発生した際も敷地外で長期的な汚染をもたらす放射性物質放出の可能性軽減という目的に即して設計・立地・建設される(2)安全性改善点を特定するため、包括的かつ系統だった安全評価を、既存設備の運転期間全般を通じて定期的・規則的に実施する(3)原子力発電施設の全運転期間を通じたこの取組に対する各国の国内要件と規制は、IAEAの関連安全基準、およびCNS再検討会議で特定された適切な良慣行を考慮した内容とする。

この宣言はまた、IAEAの安全基準委員会に回され、IAEAの関連安全基準に組み込むことを念頭に技術的な要素などが審査される予定。さらに、IAEAの広報資料でCNS非加盟国を含めた一般市民にも広く公表されるとしている。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで