EU エネルギー同盟の枠組戦略策定 団結して域外への依存削減

欧州連合の執行機関である欧州委員会(EC)は2月25日、加盟各国のエネルギー市場を1つに統合するとともに、各国が安定的に持続可能かつ競争力のある豊かなエネルギーを享受することを目的とした欧州エネルギー同盟の枠組戦略を採択したと発表した。J.‐C.ユンカー委員長の政策ガイドラインに沿ったこれらの最優先事項を実行に移し、前向きな地球温暖化防止策をともなう弾力性を持った同盟とするのが主眼。ロシアのようにエネルギー供給で欧州に圧力をかける国への依存を減らすなど、加盟28か国が結束して目標の達成を目指す考えだ。

エネルギー同盟が目指すものとして、ECはまず次の4項目を挙げた。すなわち、(1)「域内の団結」=単一サプライヤーへの依存を削減し、エネルギー供給の途絶に直面した際は特に、互いの隣国を全面的に頼りとすること。EU域外の諸国とエネルギーやガスの購入取引を行う際は一層の透明性をもたせる。

(2)「域内エネルギーの自由流通」=国境を越えたエネルギーの流れを促進するため、エネルギーの自由化や規制当局の自立に関する規則を厳しく強化し、必要とあれば法的手段を講じる。電力市場を再設計し、相互接続性や再生可能性、対応力を増強する。国内市場における政府の介入度を徹底的に検証し、環境に有害なエネルギーへの補助金を削減していく。

(3)「エネルギー効率の優先」=エネルギー効率について根本的に再考し、設備容量と対等なエネルギー源として扱う。

(4)「永続的な低炭素社会への移行」=再生可能エネルギーを含め、局所地域での発電電力が容易に送電グリッドに流れ込むよう保証。次世代型再生可能エネルギーの開発を通じて技術面におけるEUのリーダーシップを促進する傍ら、欧州企業も輸出を拡大するなど世界レベルでしのぎを削っていく。

また、採択事項として次の点を明らかにした。まず、「前向きな地球温暖化対策をともなう弾力性をもったエネルギー同盟の枠組戦略」の中で同盟の目標と詳細なステップを設定。電力市場を再設計・検証するための新たな法制定、単一統合市場に向けた重要ステップとなる地域協力の大幅な拡大、電力とガスの供給を保証する新法制定などが含まれるとした。

次に、「相互接続に関するEC政策文書」の中で2020年までに電力の10%を相互接続するという目標達成に必要な対策を設定。すでに目標達成済みの加盟国や必要とされるプロジェクトなど、加盟国間の電力融通と取引に最小限必要な対策を明記した。

また、12月のパリCOP21で意欲的な気候変動枠組を締結するためのビジョンを記した「EC政策文書」では、透明性のある大胆かつ法的拘束力を持った合意に向けた、加盟国すべてによる公平で意欲的な誓約を設定。昨年10月に欧州理事会が決定した目標値をEU提案として新たな合意に盛り込む方針だ。

なお、仏国、ルーマニア、チェコ、スロバキア、リトアニア、ポーランド、スロベニア、英国のエネルギー担当大臣は戦略策定に先立つ19日、原子力の支援枠組を策定するイニシアチブを含めるようECに書簡で要請していた模様。結果として、安全セキュリティや廃棄物管理で最も厳しい基準を満たすことや核燃料の供給源多様化を加盟国に促す内容に留まった。


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