米ウィスコンシン州議会:原子力発電所の新設モラトリアムを超党派で撤回
米国中西部に位置するウィスコンシン州の議会下院は1月12日、約30年前に制定した原子力発電所の新設モラトリアムを撤回する法案を超党派で可決した。米国では環境保護庁(EPA)が2015年8月、各州の発電設備から出る温室効果ガスの排出量削減を目標に、各州政府に対して石炭火力を規制したエネルギー計画を作成するよう指示。同州では2030年までにCO2排出量を41%削減しなければならず、これは米国内で6番目に高い削減幅となっている。このため、安全かつ環境に優しいエネルギーを手ごろな価格で確保する必要が発生。エネルギー・オプションを多様化するため、労働組合やエネルギー関係者、州議会の共和・民主の両党議員が結束して原子力発電所新設の実行可能性調査を可能にする同法案を後押ししたとしている。ただし、同法案が州法として成立するには、州議会上院の承認と州知事の署名が必要。また、いかなる発電設備を建設するにも州の公益事業委員会(PSC)が承認する必要があり、新たな原子力発電オプションでは高い経済性と安全性が求められるとしている。
今回の法案を支持したS.アレン議員によると、新設モラトリアムは廃棄物の貯蔵や安全性に対する懸念から1982年に制定されたもので、その後30年あまりが経過した。「近年は新たな技術が安全に活用できると理解しており、もしそうであるなら我々も原子力オプションを検討すべきだ」と指摘した。J.マッコ議員も、貯蔵施設の安全性は大幅に改善されたと明言。今回の法案によって、ウィスコンシン州は原子力における全米リーダーになり得るとコメントした。
同州ではかつて、ラクロス、ザイオンなどの原子力発電所が稼働していたが、現在では、ポイントビーチ原子力発電所の2基(各50万kW級PWR)が稼働するのみ。2014年5月に同州で運転状況が良好なキウォーニ原子力発電所を閉鎖したドミニオン社は、「ウィスコンシンを含む中西部12州の経済規模では原子力を拡大するのは難しい」と述べ、同地域内の電力卸売価格の低迷を原因として指摘していた。