インド:2017年初頭にジャイタプールの新設プロジェクト開始でフランスと合意
インドのN.モディ首相とフランスのF.オランド大統領は1月25日、インドの首都ニューデリーで会談後に共同声明を発表し、2017年初頭にもインド南西部ジャイタプールで仏アレバ社製・欧州加圧水型炉(EPR)6基の新設プロジェクトの開始を目指すことで合意したことを明らかにした(=写真)。同計画は2008年に両国が原子力の平和利用分野で結んだ政府間協定に基づき、2010年にインド原子力発電公社(NPCIL)とアレバ社が枠組合意していたもの。原子力サプライヤーに一定の賠償責任を盛り込んだインドの原子力損害賠償法や、建設予定地で激化した住民の抗議行動がネックとなって、実質的な作業は棚上げとなっていた。米国もインドへの原子炉輸出では同じ課題に直面していたが、2015年1月にB.オバマ大統領がモディ首相と会談した後、インド首相府は政府系保険プールの設置により、事故時に事業者とサプライヤーの保護が可能になると明言。同年12月には、米国籍のウェスチングハウス社製AP1000を国内で建設するための交渉が2016年中に決着する見通しを表明するなど、原子力設備拡大に向けたインドの対外協力は、ようやく本格化の兆しが見えてきた。オランド大統領は今回、インドの共和国記念日の式典に招かれて訪印。インドによるフランス製戦闘機の購入など対テロ分野やパリCOP21での合意に基づく地球温暖化防止協力、再生可能エネルギー開発とエネルギーの効率化といった分野で連携強化を約束した。原子力の民生利用については、エネルギー供給保証と地球温暖化防止に貢献し得ることを明確に示した上で、両国は安全・セキュリティと核不拡散、環境保全に最大限配慮しつつ、責任を持って持続可能な開発を実施していくことを再確認。ジャイタプールで6基を建設するため、2016年内に両国企業が技術・商業交渉を完了するよう促しており、ここではプロジェクトのコスト面での実行可能性やフランス側の資金調達、技術移転協力、インドで大型の重要機器製造が可能になるようなコスト効果の高い国産化等に十分配慮するとした。
また、インド側が完成原子炉の運転期間全体にわたる燃料供給保証を必要としていることから、フランス側は2008年の二国間協定に明記された約定を更新。原子炉の運転期間中は信頼出来るルートで途切れること無く原子炉用燃料が確保されることを保証した。ジャイタプール計画については、2016年中の協議を迅速化するための協力ロードマップで両国首脳が合意。2017年初頭にもプロジェクトの開始を目指すという共通目標を明示している。
両国首脳はこの関係で、両国企業間の協力活動が進展していることに満足の意を表明。アレバ社とインド最大のエンジニアリング建設企業ラーセン&トゥブロ社が2015年4月の了解覚書に基づき、ジャイタプール計画における大型機器の国産化で期限を定めた協力を実行中であるほか、アレバ社が同プロジェクトの予備エンジニアリング調査をNPCILと共同で順調に進めていることに言及した。また、同プロジェクトの協力に関する了解覚書の改定版にフランス電力(EDF)とNPCILが仮調印したことや、インド政府が2015年1月に「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」を批准する方針を定めたことを歓迎。両国の原子力研究開発部門における機関同士、および規制当局同士でも協力関係が築かれたことは喜ばしいとの意を表明した。