仏アレバ社:EDFへの原子力部門売却交渉が大詰め、政府支援で50億ユーロ増資へ
大掛かりな財政再建計画を進めているアレバ社の取締役会は1月27日、原子力事業部門であるアレバNP社の過半数株の売却でフランス電力(EDF)と行ってきた交渉を終結させるようP.クノル最高経営責任者(CEO)に指示したと発表した。同じ日にEDFの理事会が、アレバNP社の最終査定額を25億ユーロ(約3,300億円)と提案することで合意したのを受けたもの。アレバNP社の売却交渉で両社は2015年7月、EDFが同社株を少なくとも51%、最大でも75%購入することで合意したが、この時点でアレバ社側は15%~25%保有の少数株主として残ることを希望していた。同社はまた、財政再建の一環としてフランス政府の支援などにより50億ユーロ(約6,600億円)増資する原則を取締役会が承認したと発表した。こうした動きについてアナリストの間では、フランス政府が85%を出資するEDFの英国子会社がヒンクリーポイントC原子力発電所建設計画の最終投資決定を2月に先送りしたとの報道や、欧州で電力価格が低迷している状況も踏まえ、EDFが過度の財政的負担を負う可能性への懸念が広がっている。
EDFでは、アレバNP社株100%の最終査定額25億ユーロが上下に多少調整されるかもしれないと指摘。理由として、これが買収取引完了日の決算に左右されることと、アレバNP社が2017年~2018年に達成する事業実績など、双方の設定した売買条件がクリアされた後にEDFが支払う追加代金が最大で3億5,000万ユーロ(約460億円)におよぶことを挙げた。EDFがアレバNP社株を何%購入するかの最終オファーは、従業員の代表者委員会との協議、および理事会の承認後に決定するが、その前に、大幅に遅延したフィンランドのオルキルオト原子力発電所3号機(OL3)建設計画にともなう追加経費やリスクをEDFが完全に免れるよう手配されること等が必須だと明言した。
アレバ社の取締役会はこれらをすべて踏まえた上で、残った課題の解決も含めたEDFとの交渉終結をクノルCEOに指示したもの。従業員の代表者団体との協議、および所轄官庁からの承認取得もあり、取引の完了は2017年を予定しているが、同社としては戦略上の権益として、アレバNP社株の少なくとも15%は保持しなければならないとの認識を示した。同社はまたこの関連で、子会社の放射能測定機器メーカー「キャンベラ」の売却に2015年12月に同意したこと、および傘下のアレバTA社を売却する計画も発表済みであることを強調。48億ユーロ(約6,300億円)の純損失を計上した2014年決算に続き、2015年も純損失が見込まれるが、ここではOL3計画関連の補足費用や、使用済み燃料最終処分場(CIGEO)プロジェクトで建設・操業の基準価格が改定されたことなどが影響したと説明している。