ウクライナ:原子力発電分野でフランスとの協力強化
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は1月29日、原子力発電分野におけるフランスとの協力を強化するため、首都キエフに駐在するフランス大使館の高官が28日にウクライナ議会の「燃料とエネルギー複合施設、原子力政策と安全性に関する委員会」に出席したことを明らかにした。ウクライナではクリミアの帰属問題や天然ガス紛争など、ロシアとの軋轢が拡大しており、エネルゴアトム社も近年は欧米原子力企業との連携を急速に拡大。国内の総発電量に占める原子力の割合も、ウクライナは2015年に欧州ではフランスの75%に次ぐ第2位の55%となるなど、エネルゴアトム社では「両国は欧州のリーダー的存在」との認識を強調している。
議会委員会の席で、両国は地球温暖化を防止する新たな国際枠組への取り組みとして低炭素な原子力発電を開発する必要性や、ロシア型PWR(VVER)のみが稼働するウクライナの原子力部門でロシアへの依存度が高い点などについて協議。フランス側からは、原子力に関する欧州連合(EU)指令やフランスの規制を実行する際に積み重ねてきた経験が共有されるような連携が提案された。また、福島第一原子力発電所事故後、ウクライナや世界中の原子力発電所で取られている対策の重要性に鑑み、世界レベルの原子力安全に共同で取り組む可能性についても議論。ウクライナが原子力発電と安全確保で直面している実情を詳細に知ってもらうため、議会委員会の議長は2月中に行われる同委員会のヒアリングにフランス側代表団を招待した。
エネルゴアトム社はすでに2015年11月、国内の既存炉15基や将来的に建設する原子炉で安全性の改善や運転期間の延長、性能の合理化を図るため、仏アレバ社との協力を強化する了解覚書を締結。アレバ社ではウクライナで稼働するVVERも含め、すべての型式の原子炉に様々なサービスを提供できると明言している。