英原子力規制局:原子力発電所における過去15年分の包括的な事象報告書を公開

2016年2月8日

2001年4月~2015年3月末までに報告された事象件数の推移©ONR

2001年4月~2015年3月末までに報告された事象件数の推移©ONR

 英原子力規制局(ONR)は2月4日、国内の稼働中原子力発電所で2001年4月から2015年3月末までの間に発生した事象全般について包括的にまとめた報告書を初めて公開した。ONRはこれまでも、わずかに発生する安全上重大な事象については関係情報を公にしてきたが、今回のリストは国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル1未満の非常に小さい異常事象も含め、発電所から報告された全事象を網羅。すでに公開済みの2014年/2015年の年次報告書におけるONRの長官声明を補足する内容で、報告の総件数では増加していても、それらのほとんどが安全上重大ではない事象であり、レベル1~3までの重要事象件数は増えていない。すなわち、英国の原子力発電所における安全性が低下したわけではないと強調している。

 ONRの規制義務は、ONRを独立の法定機関に移行させた2013年エネルギー法や、原子力サイトでの許認可体制を定めた1965年原子力設置法など、複数の関連法規の組み合わせで規定されており、ONRは民生用原子力施設で発生した安全上重大な事象の情報を公開するだけでなく、四半期毎の意見書をエネルギー気候変動省(DECC)など関連省庁に提出してきた。しかし、2015年~2020年までの主要課題を明記した戦略の中で、あらゆる関係者から信頼を得るとともに、信用される土壌を醸成するため、規制その他の活動に関する公開情報のレベルを増大させると誓約。ONRの公開基準を満たしていない場合も含め、2001年以降に報告されたすべての安全関係事象リストを公にすることになったもの。これは産業界における傾向や課題の将来的な分析促進や透明性の向上に向けた重要ステップになると説明した。

 報告書全体の結論として、ONRは以下の点を指摘している。
 ●安全上の重大性が非常に低い、あるいはほとんどない事象の報告率は増加しているが、これは積極的かつ前向きに安全文化を醸成しようとする動きと一致。高い安全基準を満たす上で成熟したオープンな文化は重要であり、歓迎できる。非常に小さい事象の報告件数の増加は、1つには、たとえ安全上悪影響を生じない事象であっても報告すべきだという意識の高まりを反映したものである。
 ●対象期間中に報告された3,866件のうち、99.7%以上に相当する3,857件は安全上の重大性がINESのレベル1か、1未満。
 ●8件がINESでレベル2の評定を受けたが、2009年以降の発生は1件のみ。
 ●残りの1件は約10年前に発生したもので、レベル3の評定。
 ●それよりレベルが上の、住民の安全や環境に有害な影響をもたらすような報告はなかった。