欧州原子力共同体:「第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)」に継続参加

2016年2月9日

 欧州の原子力産業会議連合であるフォーラトムは2月5日、「第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)」に欧州原子力共同体(ユーラトム)が2026年まで10年間、継続して参加するとの見通しを明らかにした。EUの欧州理事会・閣僚作業グループが1月29日に勧告したもので、この判断はEU加盟国の閣僚で構成される理事会が近々、最終採択するとしている。フォーラトムによると、欧州の原子力産業には、既存設備における着実かつ絶え間ない性能改善など、技術革新を継続的に行うという伝統的特徴がある。GIFに継続参加することで、EUは原子力の専門的知見に関するリーダーシップを維持するとともに、先進的な性能とインフラが整った、世界でも最高の原子力技術革新と研究を追求していくとしている。

 GIFは経済性や安全性、持続可能性、核拡散抵抗性など、他のエネルギー源に対する十分な優位性を持つ原子力システムの概念開発を目指す国際協力の枠組。1999年に米国が提唱したもので、参加表明した13か国/国際機関のうち、米国、日本、フランス、カナダ、中国、韓国、ロシア、スイス、南アの9か国およびユーラトムが協力の枠組を規定した協定に署名した。この枠組協定は2015年2月に当初の期間が満了しており、米国や日本、フランス、韓国などの締約国は同じ月に10年間の延長協定に調印。ロシアも同年7月に署名を終えていた。GIFでは現在、ガス冷却高速炉(GFR)、鉛冷却高速炉(LFR)、溶融塩炉(MSR)、ナトリウム冷却高速炉(SFR)、超臨界水冷却炉(SCWR)、超高温炉(VHTR)--の6つの有望システムについて、事業取り決め等を作成して具体的な研究開発プロジェクトを実施中。欧州の原子力研究共同事業体は、これらのうち3つの概念を利用した4件の実証プロジェクトについて設計・開発を進めている。すなわち、

●ASTRIDプロジェクト:SFR実証炉で2020年頃にフランスのマルクールで建設を開始する予定、
●ALLEGROプロジェクト:GFR実証炉で、チェコかハンガリー、スロバキアで建設予定、
●ALFREDプロジェクト:LFR実証炉で、2020年にルーマニアのピテシュチで建設を開始する予定、
●MYRRHAプロジェクト:鉛ビスマス冷却の高速中性子多目的研究炉で、ベルギーのSCK-CEN研究センターが主導。ベルギーのモルですでに建設が始まっており2020年頃に完成する予定--である。

 これらのうちALLEGROとMYRRHAプロジェクトは、EU域内の雇用と成長促進のためECのJ.-C.ユンカー委員長が2015年に開始した3,150億ユーロ(約40兆円)の欧州戦略投資基金計画の優先投資項目に選定されている。