インド:原子力損害賠償の補完的補償に関する条約(CSC)に加盟へ
「原子力損害賠償の補完的補償に関する条約(CSC)」の事務局を務める国際原子力機関(IAEA)は2月4日、インドが同条約を批准したと発表した。CSCは各国の国内法による原子力損害賠償措置を補完する機能を有しており、事故発生時の損害が発生国の責任限度額を超えた場合、すべての締約国が拠出した補完基金により、一層多くの補償額を被害者に提供するというもの。全人口の約4割が電力のない生活を強いられているインドでは、諸外国からの軽水炉導入も含めて政府が原子力発電設備の大幅な増設を計画しているが、メーカーにも一定の賠償責任を盛り込んだインドの原賠法は米国やフランスが原子炉輸出する際のネックとなっていた。米エネルギー省(DOE)のE.モニッツ長官は同日、「世界で2番目の人口を抱えるインドで安全な民生用原子力設備を増設するための重要な一歩になった」と発表し、インドのCSC批准を歓迎。原子力は数百万ものインド国民に低コストで信頼性のある電力を供給できると述べたほか、地球温暖化を防止する低炭素経済への移行が促されるとの認識を表明した。また、事故時の損害を早急に賠償するため、IAEAが「原子力安全アクション計画」で求めている世界規模の原子力損害賠償体制や、原子力商取引における法的枠組の構築という点でも、大きな一歩であると強調。米国の開発した先進的な原子力技術が活用されるよう、インドやCSCの全加盟国と共に働きたいとの抱負を述べた。
今回の批准により、インドは国内の原賠法がCSC付属書の規定に適合すると宣言したもので、IAEAにおけるインド政府代表のR.ミスラ氏(=写真右)が政府のCSC批准書をIAEAのJ.C.レンティッホ原子力安全・セキュリティ担当事務次長に寄託。CSCは、2015年1月に日本政府が受諾書を寄託したことで締約国の原子力設備における熱出力の合計が4億kWという発効条件が満たされ、同年4月に発効していた。