IAEA:ジカ熱拡大防止支援で原子力を使ったウィルス早期探知機器を移転へ
妊婦が感染すると胎児への悪影響が疑われる「ジカ熱」が中南米で拡大していることから、国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は2月11日、関係各国からの緊急支援要請に応じて、放射線を利用したウィルスの早期探知機器や関連技術の訓練を近く提供する予定だと発表した。このイニシアチブで必要とされる経費40万ユーロ(約5,000万円)は、IAEAの年間予算で承認された緊急事態用準備金でカバー。ジカ熱拡大に対抗する能力の向上取り組みは、IAEAの幅広い支援の一環であり、天野事務局長は「この種の危機には早急に対応したい」と述べた。また、原子力を活用した技術による医療支援は、IAEAが世界中で展開する活動の重要な部分だと強調している。
ウィルス探知の具体的な支援策として、天野事務局長は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)に基づく技術の移転が含まれると指摘。同技術がすでに確証済みで効果も高く、2014年に西アフリカでエボラ出血熱が大流行した際にもIAEAが提供したと説明した。3時間以内のウィルス探知が可能であるため、その利用協力については食糧農業機関(FAO)とも連携して当たっており、早い段階でウィルスを探知できれば大流行に際し迅速な対応を取ることが可能になると指摘した。また、RT-PCR機器に加えて、関連する消費財や技術的助言、探知技術の使い方に関する訓練についても緊急に提供すると明言。ウィーン近郊ザイバースドルフにあるIAEA/FAOの農業・バイオ技術研究所で、南米とカリブ海沿岸の加盟28か国すべてが3月下旬からRT-PCR訓練が受けられるよう手配中であることを明らかにした。
ウィルスを媒介する蚊の個体数削減で補完的役割が期待される不妊虫放飼法(SIT)技術の移転要請については、すでに今月22日と23日にブラジルの首都ブラジリアで国際専門家会合を開催予定で、その結果に関する協議を24日~26日、同じブラジリアで開催する拡大調整会合で南米およびカリブ海諸国の政府当局と行う計画。SITプロジェクトに要する228万ユーロ(約3億円)は3月上旬の理事会で承認を得ることになっている。