米セントラス社:パイクトンのウラン濃縮用遠心分離機カスケードの実証運転を終了
米オハイオ州で先進的なウラン濃縮遠心分離技術の研究開発を進めているセントラス・エナジー社(旧USEC)は2月19日、パイクトン施設で3年間続けていた遠心分離機カスケードの性能実証運転を終了すると発表した。今月29日から同施設の従業員約60名をレイオフしていくとともに、数週間のうちにカスケードの除染・廃止措置(D&D)活動も開始するが、米原子力規制委員会(NRC)から受領した同施設の建設運転許可は温存し、将来的な利用オプションに備える方針である。また、パイクトンにおけるカスケードの実証活動が終了しても、遠心分離機の研究やエンジニアリング、試験などは今後もテネシー州のオークリッジ国立研究所(ORNL)で継続するとしたほか、同社の燃料事業に対しても影響は及ばないと指摘。ウラン製品や世界中の原子力発電所で使用される濃縮ウランの販売が同社の収益の大部分を占めることを強調した。
セントラス社は年間生産能力3,800トンSWUの「米国遠心分離プラント(ACP)」の建設にあたり、2008年に米エネルギー省(DOE)の融資保証プログラムで20億ドルの保証を申請したが、DOEは「技術的、財政的な点で商業規模への移行準備ができていない」として申請の取り下げを要請。その代わり、経済的で信頼性のある米国起源の遠心分離技術開発の必要性に鑑み、セントラス社の研究開発活動に補助金を交付してきた。しかし、DOEは2015年9月、必要な運転データは十分取得できたとして9月30日以降はカスケードの実証運転に補助金を交付しないと通達。これに伴い、DOEから同社への支援を任されていたORNLは、補助金を60%減の年間3,500万ドル程度に削減した上で、セントラス社がORNLで研究・試験活動を実施する契約を1年間更新していた。同社はそれ以降、カスケードの実証運転を継続するため独自に資金調達を行っていたが、今回、パイクトンで将来的なプロジェクトを支援する能力と主要技術を保持しつつ、カスケードは解体することに決めたもの。
現在、ORNL敷地内ではセントラス社の従業員約120名が、2つの専用施設でフル・サイズの遠心機の設計・開発作業を実施中。今後も、国家的安全保障とエネルギー・セキュリティの観点から先進的な遠心分離機が利用可能となるよう、その製造能力と信頼性の改善を継続していくとした。一方、カスケードについては、D&Dコストやその他の隔離・解体コストを確保する必要があるが、セントラス社は予め、NRCとDOEに対してそれぞれ、1,600万ドルと1,300万ドルの財務保証証券を提出済み。同社はD&D作業の実施状況に応じて保証金を受け取ることになるとしている。