英国:既存のガス冷却炉の運転期間延長で黒鉛減速材の劣化研究プログラム
英国で稼働する改良型ガス冷却炉(AGR)の運転期間延長計画で劣化管理の一助とするため、これらを所有するEDFエナジー社など4企業の連合体は、高中性子束原子炉を使った黒鉛減速材劣化メカニズムのシミュレート・プログラムを新たな段階に進めると発表した。延長した運転期間中の安全性を保証するデータが得られるよう、黒鉛関係の専門家やエンジニアの知見を結集するとしている。
「ブラックストーン・プロジェクト」と呼称される同プログラムは、EDFエナジー社と英国の設計エンジニアリング・コンサルティング企業であるフレーザー・ナッシュ社とATKINS社、およびオランダでペッテン高中性子束炉(HFR、熱出力4.5万kW)を運転する「原子力研究コンサルタント・グループ(NRG)」が2006年に開始していた。EDFエナジー社はすでに、14基のAGRすべてで平均7年間の運転期間延長を決定済みだが、2011年までの第1段階ではヒンクリーポイントBとハンターストンBの両発電所について、これ以降の第2段階ではハートルプールとヘイシャムAの両発電所で同様のプログラムを実施。運転期間の延長を保証することに成功したという。
NRGの2月18日付け発表によると、今後5年間の第3段階ではヘイシャムBとトーネス発電所の黒鉛減速材を対象とするほか、第1、第2段階における調査結果のフォローアップを実施する。まず、両発電所から取り出した黒鉛試料にペッテン炉内で中性子を照射し、中性子と酸化による損傷メカニズムを代表的な条件の下でシミュレートした上で、これをさらに加速。その後、NRGのホットセル研究所で高品質の物質挙動データを抽出するとしており、AGR炉心の将来的な構造健全性評価に活用できるよう、黒鉛特性モデルの開発などに反映させる考えだ。