英国:原子炉新設計画を進める3事業者が議会委員会で実行可能性を強調

2016年3月25日

 英国で約20年ぶりとなる一連の原子炉新設計画を進める3事業者が3月23日、議会のエネルギー気候変動委員会でそれぞれのプロジェクトの進行状況や課題点を明示するとともに、これらが確実に実行可能であると証言した。この審問会は、手続が最も先行しているヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所建設計画で事業者のEDFエナジー社が最終投資判断(FID)を複数回、先送りしていることから、3事業者の代表を召喚して開かれたもの。同社のV.デリバスCEOは、財政問題の解決に向けたフランス政府との協議が最終段階に来ているため、まもなくFIDを下すと確約したほか、ムーアサイド計画を進めているNuGen社のT.サムソンCEOも、2018年までにFIDを下した後、2020年代半ばまでに3基の原子炉が完成するとの見通しを表明した。

 現在、英国で具体的に進展している原子力発電所新設プロジェクトは、次の3計画。すなわち、(1)「EDFエナジー社のHPC計画」:南西部のサマセット州で160万kW級の仏アレバ社製欧州加圧水型炉(EPR)を2基、2025年以降に完成、(2)「東芝が出資するNuGen社のムーアサイド計画」:北西部の西カンブリア地方で2024年の初号機完成を目標に3基・360万kW分のウェスチングハウス(WH)社製AP1000を建設、(3)「日立製作所が出資するホライズン・ニュークリア社のウィルヴァ・ニューウィッド計画」:中西部のウェールズ地方アングルシー島で130万kW級の日立GE社製ABWRを2~3基、2020年代前半に完成--である。

ヒンクリーポイントC計画
 EDFエナジー社のデリバスCEOは、発言の冒頭で「HPC計画を進める」と断言。理由として、同社には日程通り、予算内で実行に移せる専門的知見や既存の供給チェーン、開発チームが準備されている点を挙げており、その中には出資パートナーである中国広核集団有限公司(CGN)の存在があると指摘した。同氏はまた、180億ポンド(約2兆9,000億円)という総工費の調達についても前に進めるだけの自信があると述べ、建設に伴う如何なるリスクも顧客が負うことはないと明言。同グループにおける投資のほとんどがフランス国内の既存炉、その他の関連活動であり、HPC計画への投資は全体の15%程度だとした。とりわけ、英仏両政府から同計画への全面的な支持が得られている点を強調しており、大株主である仏政府とはこの問題の解決策に関する協議が最終段階に到達。具体的な解決策としては、株主から別方式でEDFグループに増資してもらうことや非戦略的資産の売却、営業実績の向上を目指したコスト削減、などの組み合わせが考えられるとしている。

ムーアサイド計画
 NuGen社のサムソンCEOは、英国の既存炉が閉鎖時期を迎え、発電設備容量が危機的状態となる2020年代に照準を合わせて、政府と産業界が最大1,800万kWの原子力新設計画を進めている事実に言及。新規の原子力発電事業者は複数プロジェクトでこの問題に対応しており、HPC計画に限った話ではないと強調した。同社が提供するAP1000は世界中で実証済みの技術に基づいており、すでに海外で先行しているAP1000建設計画によって、ムーアサイド計画の3基におけるリスクを大幅に軽減できると説明。国内の原子力発電中核センターとなって、英国の盤石なエネルギー供給源になるとの認識を示した。また、国際的に重要なプロジェクトにおいては当然、資金調達が大きな課題となってくるが、困難であっても乗り越えられないことではないと指摘。完成原子炉からの電力売買に差金決済取引(CfD)制度が取り入れられたことや、政府の信用保証制度も利用可能である点を理由として挙げている。

ウィルヴァ・ニューウィッド計画
 ホライズン社からは関連の発表がないものの、地元メディアがA.レイマントCEOの発言を報道。それによると、昨年11月から原子力規制局(ONR)によるABWRの設計認証審査が最終段階に入り、2017年末にも英国で建設可能な設計の1つとして承認される見通しだと説明した。親会社の日立製作所がすでに巨額の投資を同計画で行った一方、ホライズン社としても多くの投資家を幅広く模索するとし、FIDは2019年初頭を目標にしていると述べたという。なお、同社とNuGen社はともに、親会社の財政状況について議員から質問を受けた模様。レイマントCEOは日立の財政状況が良好であり、建設計画への全面的な支援が継続されているとした。NuGen社のサムソンCEOも、「東芝は財政問題発覚後も原子力とWH社に対する関与を引き続き約束しており、NuGen社への投資は今も最優先事項だ」と発言。東芝とは緊密な連携関係にある点を強調したと伝えられている。