米原子力協会:産業界全体で原子力発電の効率化イニシアチブ実施

2016年3月28日

 米原子力エネルギー協会(NEI)は3月23日、米国で稼働する商業炉99基の運転効率化を目指した新たなイニシアチブを、産業界全体の取り組みとして開始したと発表した。近年は電力供給地域におけるエネルギー価格の下落や偏った電力市場構造により収益が悪化し、複数の原子力発電所が早期閉鎖に追い込まれている。このため、運転効率の促進や発電コストの削減など、経済的な継続性と市場競争力を改善することで、早期閉鎖傾向に歯止めをかけるのが主な目的。「原子力発電による約束の実現:安全性と信頼性、および経済性の向上」と題した複数年の戦略計画に従い、発電サイトにおける運転効率向上のための行動勧告を記した「効率化ブレティン」をNEIが事業者向けに発行する。それらを通じて、原子力発電の安全性と信頼性の改善、および将来的な実行可能性を保証するとともに、原子力発電施設の価値が全面的に認識されるよう規制や市場の改革を促す考えだ。

 NEIによると、「効率化ブレティン」は2月に最初の4件分をすでに発行済み。効率性の改善が望める分野を産業界の専門家チームが特定したものだが、各原子力発電所が勧告事項を実行に移す範囲やペースは、発電所の所有者や事業者が決めることになる。2016年分としては37の取り組み分野が特定済みとなっており、今回NEIは、運転員の訓練、セキュリティ、エンジニアリングおよび是正措置プログラム関連で効率改善のためのガイダンスや勧告を明記したブレティン6件を新たに発行。この中の1件では、サイトの熟練スタッフについて事業者が規定していた最小限の年間訓練時間を削減する代わりに訓練の質の向上に集中するとし、浮いた資金は安全性と信頼性の向上に充てるとした。また別の1件は、訓練タスクのリスト見直しにより管理上の負荷を大幅に軽減するよう勧告しており、訓練日程や優先事項を決める際に使用する分析調査の実施を、現行の2年毎から6年毎に削減。訓練用資金は一層優先度の高いタスクに充てられる。これらを実施する目標期限は今年の6月までとなっている。

 事業者の中には最初の4件について成果を挙げつつあるものもあり、ドミニオン社は米国で初めて、ミルストン、ノースアナ、およびサリーの3原子力発電所サイトで放射線防護関連のブレティンを実行し、今月初頭に大幅な効率化に成功したという。今後も12の専門家チームが新たな効率化案件を模索する計画で、2年間に発行される効率化ブレティンの数は数十件に及ぶとの見通し。NEIはこれらの詳細を公開する予定だが、セキュリティ関連のブレティンについては例外になるとしている。