IAEA事務局長:核セキュリティ強化におけるIAEAの役割を強調
国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は3月30日、米ワシントンで核セキュリティ・サミットが開催されるのに先立ち、核テロリズムの脅威に対する国際的努力の強化でIAEAが中心的な役割を果たせると強調した。同サミットの正式サイド・イベントとして、核物質等の使用と貯蔵、輸送における保証強化やサイバー・テロ対策などを議論する「原子力産業サミット」が開催された際に述べたもの。
天野事務局長によると、IAEAでは核セキュリティの主要側面をカバーするガイダンスを提供しており、港湾や国境検問所に放射線モニターを設置することで国境の安全性を一層保証している。また、各国の原子力施設や病院における放射性物質の盗難を防ぐため、放射線防護の改善も支援。核物質その他の放射性物質の違法な売買を見つけ出し、阻止する一助となるよう公安当局の職員に対する訓練や機器も提供しているとした。
同事務局長はまた、原子力産業界ではこれまでにサイバー攻撃の影響がなかったとする一方、原子力発電所では破壊工作ソフトによる無差別攻撃を受けた例があり、このような施設は特に狙われていると説明。IAEAとしてはテクノロジーが引き起こす脅威に対して、政府や機関、個人を引き続き支援していくと明言した。
この関連で、同事務局長は核物質防護条約を改正する重要性に言及。改正版では、各国が国内の原子力施設、および核物質等の使用・貯蔵・輸送を防護する法的拘束力が担保される。盗まれた核物質を捜索・回収する際、各国間で一層多くの協力が可能になり、核物質を従来型の爆薬と組み合わせて核汚染を引き起こす、いわゆる「汚い爆弾」の可能性を軽減できるとした。この数年間でIAEAはすでに、各国が改正に同意するよう精力的に働きかけており、現時点で改正版発効まで残り7か国になったと指摘。今後数か月のうちに、これらの同意が得られるとの見通しを示している。