独裁判所:福島第一事故直後の原子炉閉鎖指示にともなう賠償請求を棄却
ドイツのボン地方裁判所は4月6日、福島第一原子力発電所事故により閉鎖を余儀なくされた原子炉2基分の損害賠償を求めていたEnBW社の請求を棄却する判断を下した。同社はネッカー原子力発電所1号機(GKNⅠ)とフィリップスブルク原子力発電所1号機(KKP1)の閉鎖を命じた連邦政府と地元バーデン=ビュルテンベルク州政府を相手取って、2億6,100万ユーロ(約325億円)の支払を要求していたが、裁判所は棄却の理由として「原子炉の閉鎖とそれに伴う損害を回避するために利用可能だった法的措置を、EnBW社が直ちに取らなかった」点を指摘している。
福島第一事故発生直後の2011年3月16日、A.メルケル首相は故障により長期停止中だった原子炉1基と、1980年以前に運転開始した古い原子炉7基で安全レビューを行うため、3か月間の暫定停止を命令。地元州政府の指示を受けてEnBW社は同日と翌17日にGKNⅠとKKP1を停止したが、7月になってもこれらの再稼働は認められず、そのまま閉鎖することが8月に決定した。これら8基のうち、同様に期限切れを待たずに閉鎖されたビブリスA、B原子力発電所については、事業者のRWE社が直ちに地元ヘッセン州政府に損害賠償を求めて提訴しており、州の行政裁判所は2013年に州政府の停止命令は違法であると判断。控訴審でも最高裁が2014年1月、RWE社の見解を支持する裁定を下していた。
このような事例を受けて、EnBW社は2014年12月に訴えを起こしたが、事故直後の2011年4月には、停止命令の合法性に疑念を抱きつつも法的対抗措置を取らない考えを表明していた。ボンの裁判所は今回の裁定文の中で、訴訟には時効性があると説明。上告する場合の期限は1か月であるとEnBW社に忠告している。