IAEA:リトアニアの廃止措置作業でプロジェクト・リスクへの対応を助言

2016年4月14日

 国際原子力機関(IAEA)は4月8日、リトアニアのイグナリナ原子力発電所で進められている廃止措置プロジェクトの審査ミッションを派遣し、将来的に必要となるコストの見積やスケジュールを現実的なものとして維持するため、潜在的なプロジェクト・リスクに対応する計画の策定を助言したことを明らかにした。同発電所ではすでに、タービン・ホールの一部を解体したほか、同作業で生じる固体廃棄物の管理施設と使用済み燃料中間貯蔵施設がほぼ完成するなど、廃止措置は大きな節目に到達。レビュー・チームは数週間以内に詳細な報告書を引き渡す予定だが、同発電所側では経験豊富なIAEAのレビューにより、廃止措置の一層効果的なリスク管理システムが構築されると期待している。

 リトアニアはかつて、合計出力300万kWという同発電所の2基で国内総発電量の7割と輸出用電力を賄っていたが、チェルノブイリ原子力発電所と同じ設計であったため、欧州連合(EU)への加盟と引き替えに2009年までに2基とも閉鎖した。現在、ECの資金援助を得て廃止措置作業を進めており、完了は2038年を予定。この種の作業には様々なリスクや不確定要素が伴うことから、その影響を可能な限り軽減できるよう、リトアニア政府はIAEAに審査ミッションの派遣を要請した。IAEAの廃止措置スペシャリストを含む5名の専門家チームが、5日間にわたって同プロジェクトに付随するリスクと不確定要素に焦点を当てた審査を行った。

 同チームの見解では、同発電所事業者はすでに、プロジェクト全体と個別レベルの両方でリスクを特定。諸外国における廃止措置経験も取り入れられているとした。その上で、事業者のリスク特定能力のさらなる強化につなげるため、次のような示唆と勧告を提示した。すなわち、(1)プロジェクトの残存期間における基準コストとスケジュールを設定し、残りの作業の詳細を明確化、(2)リスクをプロジェクトの基本計画とコスト・スケジュールに統合、(3)特定されたリスクについて定期的に報告する正式なプロセスを策定--などである。

 IAEAによると、世界中でこれまでに閉鎖された原子力発電所157基のうち、廃止措置が完全に終わったのは17基のみ。現在稼働中の原子炉442基のうち、半数以上が30年以上稼働するなど運転認可満了に近づいていることから、廃止措置は世界中で浮上している問題だとした。このため、IAEAでは5月23日~27日まで、この問題に焦点を当てた大型会議をスペインのマドリードで開催する。今回のミッションでリーダーを務めたIAEAのP.オサリバン氏も、「かつての考え方では閉鎖した原子炉の解体を始めるまで数十年待っていたが、そうした見解は説得力を失ってきている」と指摘。「今や、我々には技術があるし、多くの場合、解体作業を行うための資金も積み立てられてきている」と述べ、最終的には、自分達の世代が恩恵を被った原子炉の廃止措置作業を後の世代に残さないという公平性の問題になると説明している。