米国のウラン生産業者:供給過剰市場に対する在庫の放出停止をエネ省に要請
米国のウラン生産業者8社を代表する組織「Uranium Producers of America(UPA)」は4月25日、国内のウラン市場が回復するまで連邦政府が保有する余剰ウランの在庫放出を停止するよう米エネルギー省(DOE)に要請した。カナダのカメコ社がその前の週、米国のウラン鉱山で新規の抽出井戸開発延期を表明するなど、市場で供給過剰と価格低迷状態が続いているにも拘わらず、DOEは閉鎖済みウラン濃縮施設の除染費用を調達するために年間2,268トン以上のウランを市場で販売し続けていると指摘。この量は国内ウラン生産業者による今年の予定生産量の2倍以上になるとし、DOEがウラン市場と産業界に悪影響を及ぼしていると訴えた。
連邦政府が保有する余剰ウランには、高濃縮ウランや低濃縮ウラン、天然ウラン、劣化ウランなど様々な形があり、DOEの原子力局と環境管理局、および国家核安全保障局(NNSA)が在庫を管理。関連の長官決定と2013年版の管理計画に沿って一部は市場で売却しており、これが2014年から2033年までの期間、市場に潜在的に及ぼす影響についてもDOEは委託調査を実施した。2014年4月の結果報告書によると、原子力発電とそれに伴うウラン市場の見通しは長期的に明るいとしたものの、同市場が福島第一原子力発電所事故後の現状から立ち直るまで、どのくらいの時間がかかるかは不透明だと記されている。また、DOEのウラン在庫売却により、2023年までの10年間に市場におけるウラン価格も変動すると予測。これによりウラン産業界における雇用も将来的に平均4%減少するとした一方で、商業市場に重大な悪影響が及ぶか否かの結論については明言を避けた。
UPAは今回、カメコ社による目標生産量の20%削減と人員整理発表に続いて、その他の国内生産業者も同様の方針を公表したと指摘。2016年に米国におけるウラン生産量は、過去10年間で最低レベルに落ち込むとの見通しを示した。また、国内の原子力発電所における所要量の95%は、すでに輸入で賄っている事実に言及。DOEに対しては「国内生産業者と競合するのではなく、長期的な必要供給量を安定的に確保できるよう国内産業を支援する措置をとるべきだ」としたほか、市場が回復するまでの間は通常の予算措置で必要経費を賄ってもらいたいと要請している。