ドイツ:脱原子力経費として審査委員会が事業者に233億ユーロの負担勧告
ドイツ政府の脱原子力政策にともなう必要経費の調達方法を審査していた専門家の委員会(KFK)は4月27日、放射性廃棄物の中間貯蔵施設と処分場の建設・操業事業を政府に移管すべきだとする一方、その経費とリスク保険料の合計233億ユーロ(約2兆9,000億円)を、政府の新たな基金に払い込むよう国内の原子力発電事業者4社に勧告した。これに対して、発電所の廃止措置と廃棄物処分の引当金を経費で積み立ててきたドイツのRWE社、E.ON社、およびEnBW社の3社が「リスク保険料は過度の負担であり受け入れられない」と反発する一方、原子力発電所の所有権を一部保有するスウェーデンのバッテンフォール社は、一定の理解を示しつつ共同で解決策を模索したいとの見解を示した。KFKの勧告を実行に移すには今後、内閣の承認と関連法案の可決が必要と見られている。
福島第一原子力発電所事故後、ドイツ政府は国内の原子力発電所17基を2022年までに段階的に全廃することを決定。これらの廃止措置や放射性廃棄物の管理処分に必要な経費を、発生者である原子力発電事業者からどのように調達するか審議するため、政府は昨年10月の閣議決定に基づき、独立の立場の専門家による委員会を昨年10月に設置していた。緑の党のJ.トリッティン元党首など3名が共同委員長を務めるKFKは、今回の勧告を全会一致で報告書にとりまとめ、経済エネルギー省に提出したもの。同省のS.ガブリエル大臣は、「報告書をよく吟味した上で政府が取るべきアクションを検討したい」と述べた。
KFKはまず、4事業者の厳しい財政状況に鑑み、これら4社の破産リスクを含めた複数のリスクを最小限に抑えるのが勧告の目的だと強調。その上で、放射性廃棄物の中間貯蔵と廃棄物キャニスターの製造、最終処分場の建設・操業、中間貯蔵施設から最終処分場への廃棄物輸送といった事業はすべて政府に移管すべきだとした。これらについて事業者が支払う経費のうち、最終処分場のサイト選定と建設・操業、廃止措置については約124億ユーロ(約1兆5,000億円)、残りの部分については約47億ユーロ(約6,000億円)になると計算。これらを合計した172億ユーロ(約2兆1,000億円)に、追加発生する可能性のある経費を賄う「リスク保険料」として35%を加算した233億ユーロを政府が運営する新しい基金に移す。ただし、超過経費など、これ以上の財政リスクはすべて政府が負担し、事業者に求められることはないと説明した。
一方、中間貯蔵に伴う廃棄物のパッケージング、原子力発電所の建屋や機器の解体、サイトの復旧については、技術的および財政的責任すべてを事業者に留め置くべきだとした。KFKはまた、廃止措置に関してこれまで事業者に提示されていた「原子力発電所を一定期間、安全に保管する」という選択肢の撤廃を勧告。すべてのサイトで解体・復旧をおこなうべきであり、連邦政府や州政府は関連の許認可を迅速に発給すべきとの見解を示している。