英国政府:原子力産業分野の人材育成で1,500万ポンドの拠出を約束

2016年5月11日

原子力分野の新しい国立大学の完成予想図©ブリッジウォーター大学

原子力分野の新しい国立大学の完成予想図©ブリッジウォーター大学

 英国の民間企業・技術革新・技能省(BIS)は5月9日、原子力を含む5つの分野で新しい国立大学を設置する支援金として約8,000万ポンド(約125億7,000万円)を拠出すると発表した。これらの産業分野にレベルの高い技術訓練の機会を提供することで、大掛かりな原子力発電所新設プログラムが進展中の原子力産業界では将来的にも熟練した労働力を確保。英国内で長引いている若者の高い失業率の改善にも役立てる考えだ。英国原子力産業協会(NIA)は、1,500万ポンド(約23億6,000万円)が割り当てられた今回のイニシアチブにより、新設プログラムや既存炉の廃止措置作業に長期的に最大限の責任を果たしていこうとする政府の姿勢が浮き彫りになったと評価。同産業界ではエンジニアの平均年齢が54才であり、他の多くの業界と同様、既存労働力における技能不足が拡大しているという問題を指摘した。

 原子力分野の新しい国立大学が設置されるのはイングランド南部のサマセット州だが、同州北部では現在、EDFエナジー社がヒンクリーポイントC原子力発電所建設計画を進めている。BISから拠出される1,500万ポンドは、政府が向こう3か年を対象に隔年で実施する詳細な歳出管理審査をすでにパスしており、大学の建物や設備の建設に使用。このほか、南西部地域の経済開発を担う自治体・企業間パートナーシップ(LEP)の「サウス・ウエストLEP」が300万ポンド(約4億7,000万円)、および同州にあるブリッジウォーター大学が450万ポンド(約7億円)を支援する。また、産業界からはEDFエナジー社とセラフィールド社が訓練施設の貸与を行う計画で、企業によって組まれた専門教育コースを設置した上で、2017年9月に開校予定となっている。ブリッジウォーター大学は、2020年までに新しい国立大学で7,000名以上の学生に高等技術訓練を提供したいとの目標を明らかにした。

 BISのN.ボールズ大臣は今回のイニシアチブについて、「企業が切望しているハイテク技能への投資だ」と説明。企業と共同で、雇用者に質の高い技術教育や明確な道筋を提供することを最優先としており、これにより経済成長と若者の就業機会がもたらされ、既存の労働力にとっても技能の向上と職の維持につながるとした。また、新しい国立大学は現段階から将来にわたって必要となる技能を生み出し、英国が草分けとなった産業において自らが最先端の地位や革新的技術を維持する一助になるとしている。