米エネ省:「国際エネルギー予測」で2040年までに世界の原子力発電量が倍増
米エネルギー省(DOE)のエネルギー情報局(EIA) は5月11日、2040年までの世界のエネルギー消費を試算した「国際エネルギー予測(IEO) 2016」を発表した。原子力については温暖化防止対策としての役割などが認識され、発電量が2012年から2040年までに年率2.4%で増加し、約2倍になるとの結果を明示。この増加は中国を中心とするアジア諸国が牽引するものの、原子力の設備容量を見た場合、同じ期間に経済協力開発機構(OECD)諸国全体の量は減少するとの見方を示している。
IEO最新版によると、2010年に549クアッド(=1,000兆)Btu(英国熱量単位)だった世界全体のエネルギー消費量は、2040年に標準ケース予測で815クアッドBtuに到達する。30年間で48%という高い増加率は主にアジアの途上国での増加によるもので、中国やインドなどアジア新興国の経済における収益増加は、世界のエネルギー消費量を予測する上で重要な要素。2040年までに予測される増加量の半分以上はこれらの国の消費量が占め、世界のエネルギー市場の発展にも大きく影響するとした。また、クリーン・エネルギー技術は今回の予測で重要な役割を果たしており、再生可能エネルギーは最も成長の早い発電技術になると予測した。
IEO標準ケースでは、2040年に世界全体の総発電量は2012年実績の21兆6,000億kWhから69%増の36兆5,000億kWhに増加。このうち原子力による発電量は、2012年に世界全体で2兆3,000億kWhだったのが2020年に3兆1,000億kWh、2040年には4兆5,000億kWhに達するとIEOは指摘。原子力と天然ガスによる発電量の増加は再生可能エネに次いで早いとしており、エネルギーの供給保証と温室効果ガスの排出量に関する懸念が、新規の原子力発電所建設を後押しすると説明した。
世界の原子力発電設備容量における実質的な増加分は非OECD諸国がもたらすと予測され、アジア諸国では中国とインド、その他では中東地域での伸びが顕著になると明言。中国における2012年から2040年までの増加分は1億3,900万kW(年平均伸び率9.6%)、インドでは3,600万kW(7.9%)、その他のアジア地域の非OECD諸国では800万kW(2.9%)にのぼるとIEOは試算した。一方、OECD諸国の中では韓国のみ、原子力設備が1,500万kW拡大するが、カナダと欧州諸国では設備容量が低下。日本でも2040年の設備容量が福島第一原子力発電所事故前のレベルより低くとどまるため、韓国の増加分は相殺されるとの見方を示した。結果としてOECD諸国全体の原子力発電の総設備容量は、2012年から2040年までの間に600万kW減少すると見込まれている。