IEA:ベルギーのエネ政策レビュー実施、脱原子力日程の先送り 勧告へ
国際エネルギー機関(IEA)は5月18日、「ベルギーのエネルギー政策レビュー・2016年版」を編纂したと発表した。29の加盟国を擁するIEAは、そのエネルギー政策を適宜レビューした報告書を作成しており、ベルギーについては前回作成した2009年版に続いて、2016年版で最新の政策評価を行ったもの。概要説明の中では、同国が近年、化石燃料の使用を削減するとともに再生可能エネルギーの使用を拡大するなど、低炭素経済に向けた努力を評価。その一方で、総発電量の約半分を賄う7基の原子力発電所については、2025年までに脱原子力を達成するという現政策上のスケジュールを緩め、出来る限りこれらを稼働させるべきだと指摘している。
ベルギーでは1986年のチェルノブイリ事故を受けて、2003年に緑の党を含む連立政権が脱原子力法を制定しており、原子炉の運転期間を40年に制限するなど、2025年までにすべての原子炉の閉鎖を計画。しかし、連邦政府は代替電源の確保に苦慮しており、2009年の政権は2015年に閉鎖予定だったドール1、2号機とチアンジュ1号機の運転期間を10年延長する代わりに、国家予算に貢献する税金の支払いを求める覚書を事業者のエレクトラベル社と締結した。この覚書が法制化される前に福島第一原子力発電所事故が発生したことから、2012年の政権は同覚書を破棄。運転期間の延長は出力の大きいチアンジュ1号機のみ許すとしたが、2014年10月に発足した中道右派4党による現政権は、電力安定供給の観点からドール1、2号機の運転期間を2025年まで10年延長する方針を表明した。これら2基は2015年1月と12月にそれぞれ40年の運転期間を終えて解列されたものの、同年7月に連邦政府とエレクトラベル社は原子力税の支払いなど、これらの運転期間を延長する具体的な条件で合意。今年にかけて、これを実行に移す法案審議も進展している。
IEAは2009年版の政策レビューでもベルギー政府に対し、包括的な国家戦略の策定において脱原子力政策を早急に考え直すよう勧告。理由としてエネルギー供給保証と経済効率、および温暖化防止対策に深刻な影響が及ぶ可能性を指摘していた。最新版の概要説明では、エネルギー供給とその適正な価格を保証しつつ低炭素経済へ移行する上で同国は大きな課題に直面していると明言。これには長期的なアプローチが必要であり、もしも連邦政府と地方政府間でエネルギー政策上の責任が分割されている場合は、躊躇することなく共同で国家的なエネルギー戦略を策定しなければならないとした。脱原子力政策も、電力の安定供給と適正な価格で低炭素電力の供給を保証しようという政府努力の前に厳然と立ちはだかる可能性があり、規制当局がその安全性を保証する限りは出来るだけ長期間、これらの運転が可能になるよう同政策のスケジュールを緩めるべきだと強調している。