仏規制当局が2015年の年次報告書、「原子力発電所の安全性は概して良好」

2016年5月30日

 フランス原子力安全規制当局(ASN)の5月27日付け発表によると、ASNは25日に国内原子力施設の安全性と放射線防護に関する2015年の年次報告書を議会の「科学技術評価のための議会オフィス(OPECST)」に提示した。放射線防護は医学利用分野で特に注意が必要としたものの、商業炉全58基の安全性については、大きな事故もなく全体的に良好なレベルであったと報告。運転開始後40年が経過しつつある90万kW級PWRの運転期間延長に関しては、2018年末から2019年初頭までの間に一般的な見解を事業者であるフランス電力(EDF)に伝えるとの方針を明らかにした。

 報告書の中でASNは、2015年は放射線の医学利用分野で国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル2に判定される事象が10件あったと述べた。商業炉関係では、原子力発電所19サイトのうちサンローラン・デゾーとパンリー、および政府が閉鎖を約束したフェッセンハイムの3サイトで安全性が際立っていた一方、クリュアスとグラブリーヌの2サイトでは平均を下回っていたとした。建設中のフラマンビル3号機で原子炉容器(RV)の組成に異常が見つかった件については、現在、製造業者であるアレバ社が追加試験を実施中であり、年末までに結果が出てから入念に審査するとの考えを明示。RVを製造したクルーゾー・フォルジュ社では、1965年以降に製造した原子力部品約400点の品質保証文書で不正が認められ、このうち約50点が既存の運転中原子力発電所で使用されていることが判明した。アレバ社はEDFとともにこれらの品質に問題がないことを確認したとしているが、ASNではこのような異常が安全性に及ぼす影響を評価するため、EDFと協議中だとしている。

 ASNはこのほか、様々な課題への対応で必要な人員の補充が、ASNの技術支援機関である放射線防護原子力安全研究所(IRSN)ともども十分に行われなかった点を指摘した。現在、両機関の従業員数は合計1,000名ほどで、現地の報道ではASNのP.F.シュベ委員長が記者会見の席上、2017年に20名の従業員を追加するために環境省と交渉中であると述べた模様。OPECSTも、2017年から2019年までの3年以内にASNが150名の安全査察官を新たに雇用できるよう、政府に追加資金の供給を勧告する考えを明らかにしたと伝えられている。