米エクセロン社:ピーチボトム原子力発電所で合計80年間の運転申請へ

2016年6月8日

©エクセロン社

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 米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社は6月6日、ペンシルバニア州で運転しているピーチボトム原子力発電所2、3号機(118.2万kWのBWR×2基)(=写真)について、2回目の運転期間延長を米原子力規制委員会(NRC)に申請する方針であると発表した。営業運転を開始した1974年当初の運転認可期間40年に加えて、同発電所では2003年にすでに20年の運転期間延長が認められており、2回目の申請が承認されれば2、3号機はそれぞれ2053年と2054年まで合計80年間運転することが可能になる。米国では巨額の初期投資を必要とする新規建設の動きが一段落しており、既存炉を有効活用する運転期間の延長は、クリーンで信頼性の高い原子力発電設備を維持する上で比較的経費がかからない選択肢の1つ。今年4月までに米国内の商業炉99基のうち83基(うち2基は早期閉鎖済み)で20年の運転期間延長が許可されたほか、ドミニオン社のバージニア州にある子会社では2015年11月、サリー原子力発電所(80万kW級PWR×2基)で2回目の運転期間延長を2019年に申請する意向をNRCに通達済みである。

 今回の決定についてエクセロン社のC.クレイン社長兼CEOは、環境保護庁(EPA)が2014年に提案した「クリーン・パワー計画」における目標達成が主な目的だと説明。2030年までに発電部門からのCO2排出量30%削減を目指す同計画では、各州がそれぞれの状況に最適な発電ミックスを選択して、独自の目標達成プランの作成が求められている。同CEOによると、エクセロン社の原子力発電所を長期的に運転することで、ペンシルバニア州では意欲的かつ達成可能なCO2排出量削減目標の策定が可能になり、EPA計画の要件を満たすことができる。また、同発電所の常勤従業員約800名を含め、数千人分の雇用が維持されるなど、数十年にわたって地元経済を支え続けることになると強調した。

 エクセロン社では2回目の運転期間延長申請を2018年に正式に提出し、2020年か2021年には最終判断を下す計画であることを、今後数週間以内にNRCに通達する。NRCの手続では、長期の運転に耐えうる堅固な設計や、予備も含めた複数の安全システムに関する包括的審査があるほか、パブリック・コメントの聴取も必要になるため、承認を得るまでに数年を要する見通し。NRC側ではすでに昨年12月、合計80年の運転期間延長申請に備えて、審査ガイダンスの策定準備を開始している。

 米原子力エネルギー協会(NEI)のA.ピエトランジェロ上級副理事長は翌7日、エクセロン社の発表について「顧客や近隣コミュニティに対してエネルギー供給や環境影響面、および経済面で多大な恩恵がもたらされる」との見解を表明。同発電所を含め、ペンシルバニア州内5サイトの原子力発電所が州内の低炭素電力の93%を賄っている事実に言及し、24時間絶え間なく大容量の発電が可能な原子力は、州内の住民や企業に信頼性の高いエネルギーを提供するとともに、同州のCO2排出量削減目標達成にも貢献できると歓迎した。