米OPPD社:年末にフォートカルホーン原子力発電所を早期閉鎖する決定

2016年6月20日

 米国のオマハ・パブリック・パワー・ディストリクト(OPPD)社は6月16日、ネブラスカ州で同社が所有・運転中のフォートカルホーン原子力発電所(FCS)(PWR、53万kW)を今年末で早期閉鎖すると発表した。財政上の利益という点で供給地域と顧客にとって最良との判断の下、同日の月例取締役会で票決したもの。閉鎖後は2033年から解体プロセスに入る方針だ。同炉の閉鎖と社内の電源再構成により、今後20年間で供給地域では7億3,500万ドル~9億9,400万ドルのコスト削減が可能になると強調。2021年までの5年間は電気代の値上げは行わず、供給地域の平均料金より20%低い価格を追求するとしている。

 FCSの閉鎖については、4月に取締役会のM.マインズ会長から要請を受けたT.バーク社長兼CEOらが、第三者機関を通じて将来的な電源計画を徹底審査した結果として5月中旬に勧告していた。決定に際し考慮したファクターとしては第一に市場の状況を挙げており、長期にわたる天然ガスの低価格により同社のガス火力発電コストが低下した上、顧客のエネルギー消費が伸び悩んでいるとした。もうひとつはオバマ政権が掲げる「クリーン・パワー計画」で、米環境保護庁(EPA)は温暖化防止行動計画の一部として、電力部門におけるCO2排出量削減プランの策定を各州に要請。しかし、同計画の最終版では、FCSのような既存の原子力発電所には無炭素電源クレジットが与えられないことが判明したという。また、発電所の経済規模も重要な要素で、FCSは北米の商業炉の中では出力が最も小さく、単機であるという事情に言及。大容量で複数ユニットを備えた発電所のように、発電量の規模でコストを分散できない点を指摘した。同社は全般的に見て、規制面や運転面でのコスト上昇が近年、米国内で複数の原子力発電所を早期閉鎖に追い込んでいるとの認識を示している。

 今後の計画として同社はFCSで廃止措置を取る計画で、ひとたび閉鎖した後は燃料の取り扱いと貯蔵の安全確保で最大限の配慮を行うと明言。燃料交換時と比べて周辺住民や環境へのリスクは大きくないと強調した。3つの廃止措置プロセスの中では、規制面と財政面で柔軟性のある「SAFSTOR」を選択し、残留放射能が崩壊するまで設備の汚染構造物を一定期間、安全に貯蔵した後、将来的に解体と除染を実施する。こうした作業に要する総コストを同社では12億ドルと予測しているが、5月末時点で3億8,800万ドルはすでに廃止措置基金に貯蓄済み。2033年までに徐々に必要額を調達していくことになる。

 米原子力エネルギー協会(NEI)は同日、原子力発電の有用性を正当に評価し損なったことがFCSの早期閉鎖につながったとの声明を発表。FCSがOPPD社による総発電量の34%、ネブラスカ州における発電量の9%を賄っている事実を挙げ、FCSを閉鎖することで同州および米国全体でも温暖化防止目標を達成するのがさらに難しくなり、長期にわたって複数の悪影響を被ることになるとした。また、FCSの閉鎖決定により、近年に米国で早期閉鎖した、あるいは早期閉鎖方針が発表された原子炉は12基にのぼったが、これは1つには原子力発電所の有する価値全体が電力価格に反映されていないのが原因だと指摘。各州政府や連邦政府の指導者達は、すべての電源の特質を適切に評価する政策をとりまとめ、それによって正しく評価された原子力施設が電源多様化の一環として温存されるよう力を尽くさねばならないと訴えている。