国際仲裁裁判所:頓挫したベレネ原子力発電所計画でブルガリアに経費支払い命令
ブルガリアの国営BTA通信によると、2012年に同国で中止されたベレネ原子力発電所建設計画の製造済み機器について、パリの国際仲裁裁判所(ICA)は6月16日、ブルガリア電力公社(NEK)に対して、契約者であったロシアのアトムストロイエクスポルト(ASE)社に5億5,000万ユーロ(約645億円)の支払を命じる裁定を下した。100万kW級のロシア型PWR(VVER)2基の建設を目指した同計画が打ち切られる前までに、ASE社は圧力容器など製造リードタイムの長い複数の機器を1号機用に完成させていたほか、2号機についても一部が完成していた。今回のICA裁定は、これらの諸経費支払いを求めるロシア側の訴えを支持した形だが、ブルガリアのT.ペトコワ・エネルギー相は「ロシアが請求していたのは12億ユーロ(約1,400億円)であり、支払い裁定額はその半分に留まった」と指摘。製造済み機器の支払いをNEKに命じるのは理に適った客観的裁定だと評価した上で、重要なのは契約外に発生した諸経費関連の損失や利息の賠償、あるいは罰金など、製造経費以外でASE社が要求していた支払い額が含まれなかった点だと強調した。議会エネルギー委員会のD.ドブレフ委員長も、ブルガリア側の主張は全面的に受け入れられたとの認識を示している。
ブルガリアはルーマニアとの国境に近いベレネ・サイトで原子力発電所を建設するため、2006年にASE社を主契約者に選定し、2008年に正式に建設契約を交わした。しかし、独RWE社が同計画から撤退した後は資金調達の目処が立たず、同国議会が2012年3月に同発電所の建設を断念。その代わり、インフラが整った既存のコズロドイ原子力発電所に7号機として1基、増設することとし、ベレネ発電所用の機器を流用する案などを検討した。その後、7号機としてはウェスチングハウス(WH)社製AP1000設計を採用する計画が浮上。同国政府は2013年にWH社の親会社である東芝に対し、戦略的投資家として同計画に出資要請する方針を閣議決定したが、翌年の総選挙後、同案件は再び検討中になったと伝えられている。