ロシア:海上浮上式原子力発電所で係留試験開始
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©ロスエネルゴアトム社
FNPPは出力3.5万kWの舶用原子炉「KLT-40S」を2基搭載するバージ型(タグボートで曳航・係留)原子力発電所。ロシアの極北や極東地域など、燃料資源が乏しく輸送も難しい場所での利用に適しているほか、大型河川の河床にも係留できるため、アジア太平洋地域の島国などで利用が可能。ロスエネルゴアトム社では最初のFNPPを完成後、2番目のFNPPをペベク港に係留し、これに続いて海外の顧客用に7~8基建設することも計画していた。
「アカデミック・ロモノソフ」の製造はモスクワ北部のセベロドビンスク市で始まったが、造船所の都合により、作業は2008年にサンクトペテルブルクにあるバルチック造船所(BZ)に移された。その後2010年6月に船殻部分が完成し、進水式も実施。2012年にもビルチンスクに曳航し、翌2013年に送電インフラに接続する予定になっていた。しかし世界原子力協会(WNA)の調べによると、BZが破産状態となったため作業に遅れが生じ、BZを買収した国営企業はFNPPの完成契約を2012年12月にBZの存続会社(BZS)と新たに締結。2013年10月に2基のKLT-40SがFNPPに設置されたという。2015年になるとロスエネルゴアトム社の親会社であるロスアトム社がチュクチ自治管区政府と協力協定を結び、その中で最初のFNPP「アカデミック・ロモノソフ」を同地区のペベクに係留すると明記した模様。2016年中に陸上設備を建設した後、2019年に起動させることとなった。ペベクを優先した理由としては、同地区からの関税収入がビルチンスク海軍基地より魅力的であった点が指摘されている。またFNPPは、同地区の近隣で経年化が進んだビリビノ原子力発電所(1.2万kWのLWGR×4基)をリプレースする一助としても、役立てられることになる。